74.石のある集落
翌朝、朝日と鳥のさえずりで早くに起きる。
夏至が過ぎてすぐなので、3時少し過ぎたぐらいで明るくなりはじめ、4時には気温も高くなってくる。
美しい富士山型の駒ケ岳を見ながら軽く食事をする。
干し肉が中心だ。食事というよりは、それをかじりながら出発の支度をして、歩きはじめる。
右手に現世とは違う姿の駒ケ岳を見ながらしばらく進むと海が見えてくる。
噴火湾だ。
この辺りから集落も再び増えてきた。
北海道森町を通過中だ。現世でいうなら国道5号線。
いかめしが名物なのだが、とうぜんこの時代には無い。
ちなみにイカは青森の塔の集落でも作っていたし、何度も食べたことがある。
実はスルメイカ(干イカ)も今回の食糧として持ってきている。
クチャクチャかじりながら歩いている。
この辺りの集落でもイカや魚などを干している。
海の集落独特の香りがする。
国道5号線とほぼ同じか、やや内陸よりを道が続いている。ところどころ山道になったりする。
天気がいいので北海道を代表する山のひとつ、羊蹄山も見えるが、かなり噴煙を上げている。
その手前には有珠山が見えるがそれらの景色は現世とは大きな違いはなさそうだ。
今日は集落に世話になるという。
そこそこ規模の大きな集落で、ストーンサークルもある。
集落の近くの丘からは富士山型の北海道駒ケ岳、遠くに同じ富士山型の羊蹄山が見えるなかなか景色の良い集落だ。
ここのストーンサークルは少し容が違った。
並行する2列の石が円形に並んで2重の輪を作っている。その並行する輪の列の中に丸い石がほぼ均等に12個ぐらいあった。
毎年、満月を表す丸い石を11個から12個転がして月を定めて、今年の暦としてみようということだ。
集落の呪術師に聞くと、他のストーンサークルと同じように当初は狩猟採集場の方向をあらわすものだったりしたが、そういった約束事よりも季節や日にちで分けるやり方のほうがいいだろうと思い、月の運行、つまり月の満ち欠けを基準に1年を分けて配分する方法がいいのではないかと思ってやっているところだという。
ここでは1年365日の太陽暦よりも月の運行12回の満月で360日。それを春分からはじまる4期に重ねてずれた分を冬至から春分までの間に閏にする方式を試しているという。
冬至直後であれば多少ずれても問題ないのと、この時代の太陽暦には月で区切る方法がなく、4期(春分、夏至、秋分、冬至)という長い区切りしかないので、やはり日付を誰でもわかりやすく伝えるためには月の満ち欠けが必要不可欠になるからだろう。
月の満ち欠けの見た目でもわかる1サイクルが30日前後で済む太陰暦が人々にわかりやすい。
実際の1年の季節を合わせるのは春分を起点にすれば、狩猟採集のサイクルからいっても、冬至近辺にズレてくるのは気にならないだろう。
古代の暦も春正月が多かったと記憶している。縄文時代も同様の考え方はあったと思う。
そういえば、うちの物見の氏族にきてくれたクルマンタの呪術師カント・ヨミ・クルも暦をなんとか作ろうと苦心していたが、この時代はストーンサークル含めいろいろ試行錯誤している期間なのかもしれない。




