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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
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72.北への旅を計画しよう

春の採集がひと段落する時期に少し北に出かけたいと思いアヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)を呼んだ。


こちらに連れてきた交易系の長老はアヂ・ノ・チプ1人で、他の交易系の長老たちは青森の津軽半島交易拠点に残してきた。もともと南方系の交易関係者なので、北海道側に連れてくるより、向こうで繋がりが切れないようにしたほうが良いと感じたからだ。


ただ、南方系のヒスイなどを扱うミツ・ソ・ピ・ヒ(緑青の石の翁)からの最新情報で、南でも黒曜石が流通しはじめているという。こちらの北海道産の黒曜石のルートも再開してきているので青森に戻るか悩んでいるようだ。


「北のモシリ(北海道)の黒曜石の産地はどのくらいの距離がある?」


俺は新しい交易範囲を広げるのもいいかと思ったが、噴火災害の影響で本拠地に戻れない今は、今までの交易相手との関係を重視したほうが良いと思った。その関係性も含めて俺も黒曜石の産地に行ってみたいと思ったのだ。


「近い産地ですと、6日から7日ですが、遠いほうの産地ですとさらにその3倍近くかかります。めったに直接行くことはありません。我々と同じように交易系集落が取り仕切ってますので。」


そうか、車もない時代だから交易系といっても、現場まで行く必要はないのか。ならば、南方系の黒曜石だって、途中いくつもの交易系集落を経てくることになる。現世と違って金銭的な価値の取引マージンは発生しないが、自分たちが優位な取引をしようとすると、物々交換の交換価値の比率は何度も交易系集落を経るごとに高くなってしまう。しかも、全てを南方系の交易中心位にすると、青森やその周辺の北海道と本州の中継的な優位性も失う可能性が高い。


「前に、アペ・ルイ・ト(アスファルト)の取引の時に聞いた時には、直接買い付けても、こちらに売りにきても交換比率は同じと聞いたけど、黒曜石の場合も同じなのか?」


「確かに、直接取引できれば同じですが、黒曜石の場合は遠くの産地ですので、同じような交易系の集落や、私どもの場合、3日ほど北にある市のある集落に集まるようになっています。そこで、近いほうの産地ですと採集した集落民、遠い産地は途中の交易団を介して集まり交換を行うことになります。遠いほうが品質も良いせいもありますが、途中に交易集落が介在する分、交換レートは高くなります。」


ここから3日か。現世では八雲町から長万部にかけてのあたりのどこかだろう。


「交換レートがもっともよい品物は何になる?」


「ヒスイがもっとも良いです。」


南方系の交易で手に入れる、これもなかなか価値の高いものだ。

「津軽錦石ではだめか?」


「はい、遠いほうの黒曜石産地では普通に採れるものなので。」


あぁそうか十勝石=黒曜石だった。叩いたり削り割りながら形を整えれば石器、磨けばきれいな十勝石なるんだった。


ということは、量を確保するためには、多少質が落ちても近いほうの集落と交換すればいい。しかも、近いほうの集落はその3日ぐらいで行ける集落まで交換に訪れるという。実質、交換にお互いの損失は無いに等しいということだろうか。だとするとのその市のある集落は何で成り立つのか?この時代に税という考え方はないと思うのだが。


「市のある集落には何かメリットが?」


「我々の半島の以前の拠点集落と同じで、住民は少ないです。そこに遠くから、産地や交易系の人々が集まりますから、それぞれが取引時の仮の小屋を作り、滞在時には自分たちの食糧などはできる限り持ち込みます。もしくは、交換によって地元住民から食料を受け取ります。同時に集落の神へちょっとした供え物を捧げます。これが彼らの集落で人々を受け入れ市を開く意義になります。ちなみに狩猟・採集場は全て解放されていますが、期待して行って何も採れないと食べるものが少なくなりますので、基本は軽い乾物系を中心に持っていきます。」


なるほど、神への供え物がいるのか・・・。

それで思い出したが、俺も神ってことで集落にいるが供え物ってあったかな?まぁ一部にバレているけど公には秘匿されているような存在だからないのかな?


「あっ、オホシリカム様へのお供え物は従来通り、巫女様たちの収入となり塔の運営に使われています。オホシリカム様は自ら狩猟・採集にもお出かけになられていますので、今のところは心配ないかと思いますが・・・」

慌てたようにアヂ・ノ・チプが言った。まぁ、普通はホントの神様がいるわけではないので、全部集落民で使えるんだろう。というか、その分であれだけの塔を建てたのか。


「いや、それはいいけど、今のところというのは?」


「はい、集落を事実上3つに分けた状態で、南方系交易団の訪れる塔の集落と半島の拠点集落には今まで通りお供え物が上がるかもしれませんが、こちらには私の黒曜石の交易しかありませんし、先ほどの説明通り、こちらが出向く交易になりますので、お供え物をもらう側ではないということです。ただ、先ほど言いましたようにオホシリカム様も働かれておいでですし、向こうと違って塔の維持の必要もないですからご安心ください」


うぅーん。ということは1か月以上の長期の留守はまずいな。

しかも黒曜石の交易もせいぜい遠くても長万部止まりか。


「以前、カンナアリキ様に聞いたが、北にいくととても優秀な犬がいると聞くが、その市の開かれる集落辺りで手に入れることはできるか?」


「その市でも時期的に犬は手に入りますが、もう少し北の集落民が飼っている犬が優秀と聞きます。そういった北の集落民がたまに子犬を連れてくることがありますので運が良ければ手に入りますよ」


犬の件もそのあたりで片付いてしまいそうだな。

現世なら長万部で温泉に入ってかにめし食べて帰ってくるだけでも十分だが・・・。


俺が心に秘めているチートはもっとずっと北へ行かないと材料が見つからないかもしれない。正確には、もっと近場でもあるのだろうが、俺が知っているそれの採れる具体的な場所は、その最果ての北の地と、俺の故郷周辺のほか数か所だ。


北の地で試すのは諦めるしかないが、とりあえずその黒曜石の市の開かれる集落にはいくことにした。


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