70.春になったら
移住に際して犬は連れてこなかった。
青森のほうの塔の集落でも狩や番犬として飼っていたが、全て青森の塔の集落と交易拠点集落の家族に任せて、こちらへは連れてこなかった。ほとんどの犬がもともと向こうの家族に飼われていたのも理由だ。
というより、北に渡る家族の意向調査をしたときにやはり犬を飼っている家族は海を渡るのに躊躇ったためだ。
ウェン・カム(悪い神=悪い熊)は倒したが、それでも狩猟・採集場にはクマは出没するし、集落に出てくる可能性もある。何より、俺は失念していたが、この時代の日本には普通にオオカミがいる。北海道だからエゾオオカミだと思うが、群れで行動しているので、非常に危険だ。
番犬としても犬は必要だろう。
ただ、この時期になるとよい子犬は手に入らないし、カンナアリキの話ではもう少し北の集落で飼っている犬が非常にお勧めだという。
初夏には子犬がたくさん生まれるので、直接見に行って選んだほうがいいという。
春の狩猟・採集が少し落ち着く頃にこの時代の北海道も見たいので、北への探検旅行に行くことにする。
冬は寒かった。青森よりも。雪は少なくて雪掻きなどはあまりしなくて済んだが、集落の立地場所が眺めがいいぶん風当たりが強くて建物が冷やされる。
竪穴式住居も作ったばかりで、土をまだ被せていない作りのも多く、青森より寒いという。青森のほうは土を被せた上に、さらに雪が積もって保温効果もああるのだろうが、こっちは雪が少ないうえに吹きっさらしでよく冷やされる。
来年はそこら辺の改良工事も必要だろう。
冬場は3人の巫女と俺と4人でかたまって上から毛皮を被って寝ていたが、それでも端になる者は寒かった。それもあって、俺が真ん中で左右がローテーションだったものが、俺も含めて寝る位置が全て変わるようにローテーションを組んだ。つまり俺も端っこになることが出てきた。夏ならありがたいが冬場は毛皮の布団をとられることがあって本当に寒かった。




