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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
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待伏せ I

ウェン・カム(悪い神=悪い熊)はあの未明の襲撃の後、集落近くで見かけることはなくなった。しかし、5日後には北の集落へ通じる峠で人が襲われた。襲われたのは夕方だったが、警戒して10人で歩いているときだったという。


再び同じ手でウェン・カムが罠にかかるかわからないが、今度は弓だけではなくて長槍を多く用意した。


アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)「オホシリさま、北の交易路が本格的に復旧して黒曜石の供給がはじまるようです。あと、南の黒曜石が新たに半島の拠点集落にもたらされたと知らせがありました。あわせて、毒が回りやすい鏃の製法の知らせがきました。」


今までの石鏃はほぼ正三角形の形で底辺が緩いカーブで凹んでいるだけだった。これだと、石鏃部分が肉に食い込んでも、一番毒ののっている石鏃の根本、まさしく矢尻というのだろうか?その部分がウェン・カムのような毛と皮が厚く強靭な獣の体内には達しない。

新しく製法が伝えられた毒のまわりやすい石鏃は、三角形の底辺の部分がより鋭角的に削られている。深く凹んでいる。これにより、従来よりシャフトの接合部分が鏃の前にきて、両端を石鏃の刃が囲むから肉に食い込みやすくなる。その接合部分は一番毒がのりやすい。これなら、威力の弱い弓でもいけるかもしれない。


さらに槍の先の黒曜石の削り方も変更した。表面をできるだけ凹凸を増やして毒ののりをよくした。


あとは、首長のカンナアリキに強力な毒壺を持ってきてもらうが、問題はウェン・カムが再び、同じ罠にかかってくれるかという問題だ。

でもやるしかないだろう。


罠の準備が整って、アシリ・ウパシたちがカンナアリキの都合を聞いてきた。

明日から次の満月の前までなら、こちらに滞在できるという。

今は上弦の月だから約7日間。1週間のうちに仕留めなければならない。


翌日、俺たちはカンナアリキを迎えに行き、俺たちの集落に来てもらった。

その日から、俺も含めて男たちは全員、夜は罠の張り込みで警戒を強化した。


連日連夜、罠の警戒を続けたがウェン・カムは現れなかった。

6日目になると、ここから離れた集落が襲われたとの知らせがあった。

それでも、念のためカンナアリキがここに居られる明日まで警戒を怠らず待ち続けることにした。

結局、ウェン・カムは現れなかった。

アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)「ウェン・カムはここを諦めたのでしょうか?」


アシリ・ウパシ「いや、あれくらいの熊がそう簡単に諦めるとは思えないが」


俺「そうだな。たぶんわざと遠くを狙ってこちらをおびき出そうとしているか、こちらの警戒を緩めて油断させようとしていると思っているかもしれない。今後も警戒を続けたほうがいいと思う。ただ、カンナアリキ様をここに押しとどめておくわけにもいかないだろう。それに、皆の疲れもたまっているだろうから、ここは一度作戦を練り直す時間も含めて、全員による罠の警戒を休止して、交代の集落警戒に戻すことにしよう。」


アシリ・ウパシ「陽が高くなったらカンナアリキ様をお送りしてきます。」


俺「いや、アシリ・ウパシは休んでいてくれ。俺がカンナアリキ様を送って行ってくる。陽が高いうちはヤツも襲ってはこないだろう」


レブン・ノンノ「私も行きます。」


まぁ真昼間でほとんど見通しの良い道だし大丈夫だろう。


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