再度の作戦
翌日、レブン・ノンノ、アシリ・ウパシ、アシリ・クルの4人で集落の首長のカンナアリキのもとを訪れた。
ウェン・カム(悪い神=悪い熊)を倒すための毒の情報を得るためだ。
カンナアリキ「確かにもっと北の民は強力な毒を使うと聞いています。ただ、毒の威力だけではないようなのです。熊を倒すためには鋭利な黒曜石の鏃を使いますが、ただ毒を塗っただけでは、刺さる途中で皮が毒を遮って体の中を巡らず効果がないのです。」
アシリ・ウパシ「毒は膠でドロドロにして使っていますが」
カンナアリキ「普通の動物であれば、それで全く問題なく仕留められますが、キムン・カムやウェン・カムといったカムの称号のあるものたちは皮や毛がはじいてしまうといいます。今までの毒の使い方で倒すためには、毒の浸み込みが十分な鏃と柄の接合部分までを確実に体内に押し込む必要がありますが、安全のため距離をおいたうえで、私たちの弓矢の威力ではそこまでできるか疑問です。」
アシリ・ウパシ「では、どうやって」
カンナアリキ「膠でのばした毒を槍に塗るまでは同じですが、皮膚や毛で毒が落ちないように乾燥させてしまうようです。ただ、そのぶん効き目が遅くなると思うのと、切れ味が落ちたり、刺すための力がいるかと思います。かなり近くから射るか、槍で立ち向かうしかないと思います。」
俺「ウェン・カムに戦士の一撃は効かないように見えますが?」
全てではないにしろ、熊の多くは攻撃する前にいちど立ち上がることがある。その立ち上がった隙を槍で突き刺し一撃のもとに仕留める方法もあるが、昨晩のウェン・カムは火を前にしても、その後ろの槍を構えた人を見ても怯むことなく、立ち上がらず突進した。威嚇のため立ち上がることすらなかった。
カンナアリキ「はい、ウェン・カムはこの世に恐ろしいものが無くなったものなのです。」
つまり正面から、突進する熊、もしかしたら前足で強力な攻撃を連発する凶暴な熊相手に槍で対決するしかないのか。
カンナアリキ「もし、再びウェン・カムと対峙なさるのでしたら、私も行きましょう。強力な毒壺は首長でなければ集落外への持ち出しは禁忌なのです。」




