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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
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新しい集落

函館の山側、海岸段丘の縁に集落が散在している。どれも、同じ物見の氏族の集落だが、昨晩お世話になった集落に比べるとどれも規模は小さい。ただ、集落同士の距離は短く、歩きやすい道で繋がっている。なので一緒の集落と言えなくもない。堀や木柵はほとんどない。多少排水のためなのか掘った溝があるくらいだ。


やがて海岸段丘が切れると湿地と川の河口があり、さらにその向こうに一段高い海岸段丘が見える。湿地側には道がないが、少し内陸側の川に丸木でできた橋が渡してある。このあたりの道は山を越えた先の集落に繋がっていて人通りは多いという。ただ、それもウェン・カム(悪い神=悪い熊)が出没してからは日中の日の高い時間帯以外は通ることができないという。しかも、その時間帯でも先日人が襲われて亡くなってしまったという。


川を渡って道は二手に分かれて右の再び海岸側へと通じる方向に向かう。

海岸段丘の丘を斜めに上がっていくと、すぐ上に新しい集落が作られていた。

集落の先にも細い道が続いているが、その先は大きな集落はなく、数家族程度の集まりの集落が数か所あるだけだという。

海岸段丘の内陸側には短い笹が一面に生い茂っていて、さらにその先に森があった。

集落はその山側に簡単な木柵で囲ってあり、その周囲だけ笹が刈り取られ、毎晩焚かれる焚き木の燃やしたあとが何か所も残っていた。


アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)が慌ててやってきた。


アヂ・ノ・チプ「申し訳ありません。出迎えもせず。」


俺「いや、いい。なんでもウェン・カムが来るから夜中も見張っていたのだろう。」


アヂ・ノ・チプ「はい、皆で交代で火を絶やさず見張っておりますが、女子供を狙うといいますので、男手だけでやっておりますので、少し負担が大きく」


俺「我々も来たし、その辺は少し楽になるようにしたいと思う。それに、このままでは狩猟・採集もできない。幸い、アシリ・ウパシもこちらの本隊と一緒に来てもらった。久々に熊狩りと行こうじゃないか」


アヂ・ノ・チプ「いえ、それが・・・。うまくいくかわからないのです。そのウェン・カムはこの辺りの、、我々の南のモシリで見る熊とは違うようなのです。」


俺「違うとは?」


アヂ・ノ・チプ「大きさがとても大きいのと、暗闇の月が我々の知っている熊ですが、あれには月がなく色が枯れたブナの葉の色なのです。」


ツキノワグマじゃなくてヒグマか?


アヂ・ノ・チプ「こちらの長老たちの話では、ウフィヌプリ(燃える山)の影響でやってきたに違いないと言っていました。」


ウフィヌプリ(燃える山)はどこの山のことだろう?

有珠山?羊蹄山?樽前山?

いずれ北のほうの山だろう。

そういえば黒曜石の入荷が滞っていたはず、そうすると樽前山あたりだろうか。


俺「いずれにしても、放っておいて良いということではない。少し落ち着いたら、作戦を考えて必ず仕留めなくてはいけない。」

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