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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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物流拠点集落

半島の交易上の拠点集落をはじめて訪れた。

中継集落ともいえるが、塔の集落で交換取引を終えた品物で北海道に渡る分は一度ここに集積される。その後、北海道へ渡る交易人や北海道側から来る交易人に引き渡されて海を渡る。もともとは物流拠点のひとつだった。


俺はてっきり津軽半島のもう少し先端の竜飛岬に近い、青森県今別あたりにあるのかと思ったら、現在の青森県蟹田、外ヶ浜町の少し内陸部にあった。

よくよく話を聞くと、海峡、彼らが言うところの「左右から流れる大きな塩の川」を渡るのは、こちら側のスタートはイマックベツ(後ろの川)現在の今別から竜飛岬の辺りから渡る。津軽海峡では日本海側から太平洋へ流れる海流が強い。だから本州側から渡るときはできるだけ日本海側に近いほうから渡る。北のモシリ北海道側から渡るときは、下北半島にぶつかり巻き込む海流に乗り、こちら津軽半島側の内側にたどり着くようにするという。その際、往路、復路とも中継場所に向いているのがこの場所なのだという。

ちなみに西側(日本海側)の交易系のグループは現在の小泊から北海道に渡る。北海道に行く場合にには、こちらよりも有利な場所だが、北海道側からこちらに渡る場合は、我々のほうが有利な場所になる。


集落総出、塔の巫女ミナトマリ(笑う港)たちも出迎えてくれた。

カント・ヨミ・クルも同行している。クルマンタ(黒又山)はもう戻ることができない。戻るとしても相当先になるだろうから、我々のもとで呪術師をすることになった。正直、俺のもとに置いていろいろ教えてやりたいが、ここと、留守にする塔の集落との両方でやってもらいことがあるので、まずはここ拠点集落でその指示を出すことにする。

拠点集落にも呪術師はいるが、ここの呪術師は海流、気象の専門だ。


この集落でも狩猟採集は行ってきたが、それは滞在する住民の最低限の範囲だった。昨年から生産性をあげる試みを開始した。具体的はクリやクルミの移植、栽培植物の導入などだが、1年たたず噴火に至ってしまったので、まったく機能していない。これからは、この集落でも今までと同じように自給自足と交易の両立。職能狩猟と家族生産の兼業自給自足を実現しなければいけない。

そこで、狩猟採集場をうまく設定し資源管理のためのエリアローテーション、季節ごとのローテーション、家族ごとの配分なども行う必要がある。もともと、自給自足系のクルマンタ集落の呪術師だったカント・ヨミ・クルはそのあたりは得意だろう。現在は海流と気象、月の満ち欠けに関連する干満記録のウッドサークルしかないが、これとは別に石のストーンサークルを作らせることにする。それが、彼の仕事になる。


さて、拠点集落は昨年から人を増やしてもいい準備はしてきたが、さすがに塔の集落のすべてを収容できるほど大きくない。塔の集落からは十分な貯えは持ってきたが、ここでいつまでもとどまっているわけにはいかない。


まずは先遣隊を北海道側に渡すことにする。

交易系の長老のうち南方との取引を行うアペ・ルイ・ト・ヒ(燃える土の翁)、ミツ・ソ・ピ・ヒ(緑青の石の翁)はこの集落に残すことにする。アカル・ヒ(瑪瑙の翁)も津軽錦石やメノウの生産と交易のために残す。アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)は北海道に何度も渡っていて、向こうの物見の一族とも親交が厚いので先遣隊の隊長としてわたってもらう。狩猟系の長老アシリ・ウパシ(新しい雪)には、狩猟系を家族ごとに2グループに分けて、ここと、北海道に渡るものとを組織させる。これは俺含めて先遣隊の後の本隊として渡る。栽培系、採集系は可能な範囲でここに残すが、できるだけ希望を聞こうと思う。

先遣隊の10名は明日にも出発することになった。

海流、気象を見ていた呪術師が明日の出発を勧めたからだ。


ささやかながら、塔の集落から持ってきた食料で宴会を催す。

しばらくの間の別れになる。

でも、この難局、不安を乗り換えれば素晴らしい発展がある。

と思っていたのは俺だけのようで、意外と皆は「生きていればどうにかなるさ」という感じのようで不安がる者はまったくいなかった。実際には向こうの物見の氏族との関係性によるものだと知ったのは北海道側に渡ってから知ったのだが。

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