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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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移住計画

「カント・ヨミ・クル(天を読む人)様が来ました!!」

誰かが大声で知らせてくれた。


正直言ってダメかと思っていた。地震が発生してから噴火までの時間があまりに短かったので、火山に近いクルマンタの避難は間に合わなかったと思ったのだ。

なにより噴火から1か月以上経っているが、その方面からの情報が一切ないのだ。

カント・ヨミ・クルは灰まみれでかなり疲れ切った様子だが、目はギラギラと輝いていた。


カント・ヨミ・クル「オホシリカム様、見てまいりました。この目でしっかりと見てまいりました」

興奮したように言っている。

俺「まず、落ち着いて、こっちに」


長老達にも集まるようにカンチュマリに伝えて、大堂に彼を案内した。

カント・ヨミ・クルは興奮して次々喋りたそうだったが、落ち着かせるために水を飲ませて、まずはこちらから質問した。

俺「あの後、噴火までは大丈夫だったのか?」

カント・ヨミ・クル「はい、あの後20日ほどは何事もありませんでしたが、20日経ったあたりから、小さな地震が起き始めました。それで、呪術師衆と話し合って、集落民全員を西のほうへ避難させることになりました。私は避難を他の呪術師衆に任せて神々の沸き立つ湖に行こうとしましたが、途中の山々で大きな地割れが起きており、行くことができませんでした。それで、私も西の集落に向かおうと、川を渡った直後です。大きな揺れの後、東の空に巨大な真っ黒い雲が沸き立ったのです。」


そう話している間に、長老たちが全員周りに集まってきた。


俺「それで、その灰まみれのかっこうは?」


カント・ヨミ・クル「巨大な黒い雲は稲妻を呼びすさまじい勢いで天を覆い始めました。見ると、クルマンタ方面は黒い雲が大地を走り飲み込まれるところでした。幸い私のところまでそれは達しませんでしたが、灰が降り始め、小石も降ってきました。もうダメか?と思ったときに、西から強い風が吹き始めたのです。」


俺「それはこちらも同じ状況だ。」


カント・ヨミ・クル「その後、西のピナイまで行きましたが、川が泥水で氾濫して大変な状況でしたが、なんとか皆無事に済みました。10日ほど前に川の氾濫がおさまり、巨大な雲も色が白くなりましたで、クルマンタへ様子を見に行こうとしたのです。」


俺「だいぶ落ち着いたとはいえかなり危険なことだ」


カント・ヨミ・クル「はい、実際クルマンタまでたどり着けませんでした。クルマンタまでの谷筋、平原、全てが厚い灰と軽石、中には大きな岩まで落ちていて、木々はなぎ倒され、焼け焦げ、もはや黄泉の国よりも酷いのではと思ってしまうほどでした。」


俺「それで、こちらに」


カント・ヨミ・クル「いえ、どうしても噴火の状況を確認したくて神々の沸き立つ湖へ行く決心を固めました。ふとオホシリカム様が湖の西の端なら観測できるかもしれないと言ったことを思い出し、西の山から湖へ向かってみました。」


俺「それで、状況は?」

正直、かなり危険なことだし、俺がいたら絶対止めているが、この手合いの人物は好奇心を満たすのに命を平気で賭けてしまうタイプだと思った。


カント・ヨミ・クル「本当に大変でした。雪用の輪かんじきを使ってもなかなか進むことができず、それでも風の向きと天気に恵まれて、なんとか湖の見えるところまでたどり着きました。なんとあの神々の沸き立つ水が全て涸れ果てていました。すべてが白煙をあげる大穴に吸い込まれたように、湖の底に水の流れた後を残して、ほんとに全て地の底に行ってしまったように無いのです。そして、オホシリカム様が以前お話してくださったように、両手でその穴を抱えるような山が残るだけで、その中央は深い穴しか残っていません」

彼は両手で物を抱えるようなしぐさをしてみせた。


もしここが過去の日本の十和田湖なら、これで大きな噴火は次の900年代を残すのみ。湖底に残る水の流れた後もカント・ヨミ・クルが確認した。中湖の噴火で湖底がもっとも深くなるから、それが浅くなるような噴出物を伴う噴火は無いはずだ。話を聞いても十分な深さまで吹き飛んだから、これ以上の規模の噴火もないはずだ。もし異世界やパラレルワールドなら絶対という保証はないが・・・。


俺「カント・ヨミ・クル、正直にいってバカなことをしたと思うぞ。本当に危険なことだ。ただ、おかげでいろいろわかったことがある。本当にありがとう。とにかく、灰は身体に良くないから、よく灰を落として着替えてゆっくり休んでくれ」

とりあえず、急だったので大堂に毛皮の敷物などを用意してもらって、そこで休んでもらうことにする。その準備間、体の灰を落としてもらうために彼は外に出て行った。


俺はカンチュマリに言って、カント・ヨミ・クルの着替えを用意させた。


俺「長老たちは引き続き残ってくれ」

俺「とりあえず、もう大きな噴火はないと思う。小さなのはあるかもしれが。」


アシリ・ウパシ(新しい雪)「しかし、山があの状況ですと、狩猟や採集に大きな影響が出ますし、やはり移住は避けられないのでは」


他の長老たちも同じ意見だが、交易系としては完全移住ではなくて留守を残す方向を維持したいようだ。

俺「留守については、再度、備蓄とこの周辺で生産可能な物資、さらに半島の拠点から援助が可能な範囲でどのくらいの人数が可能か検討して欲しい。」

それによって、今残留を希望する3家族だけにするか、さらに減らすか、それとも増やすのか検討しなくていけない。


ミツ・ソ・ピ・ヒ(緑青の石の翁)「交易系からも1家族以上を残すべきかと思います。」


俺「確かに。まずは調査が必要だが、少なくとも2,3年は狩猟採集はゼロと思ったほうがいい。そうなると狩猟採集に長けた人を残すよりは、人との交流が得意な交易系や、集落維持の技術や力仕事が可能な人々を残すほうがいいかもしれない。今残留を希望する家族はどういった家族か?」


アシリ・ウパシ「食料管理官の家族で本人のほかに男性2名子供1名の家族、アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)様の交易団の一員の男性1名とその家族で女性1名、子供2名、アペ・ルイ・ト・ヒ(燃える土の翁)様の交易団の一員の男性2名とその家族女性1名です。」


俺「その3家族で問題なさそうだが。特に狩猟採取系や職能系は半島の拠点集落に入り、その留守の3家族の分の食糧供給をできるように充実させたい。」


俺「半島拠点からここまでの移動時間は?」


アヂ・ノ・チプ「荷無しで1日で着きますが、荷があると途中で泊ったほうがいいでしょう。」


俺「途中に中継集落は?」


アヂ・ノ・チプ「1か所が交易上の友好な集落です。そちらに協力を求めて、中継で休める場所を作りましょう。」


俺「では、さらに細かな移住計画は後程再度話し合うことにするが、それぞれ、今話した内容で、狩猟採集系と植物栽培系から可能な範囲で半島拠点に一時移住、それ以外で半島拠点で賄うことのできない人は北のモシリへ一時的に移住する方向だということを伝えておいて欲しい。留守を守る3家族にもその準備をするよう伝えてくれ。」


秋の狩猟採集は移動した先で行えるように早めに移住を開始したほうがよさそうだ。

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