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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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移住の決断

長老たちや集落民も周りの山々の惨状を見て悟ったようだ。

ここには留守に必要な最低限の人を残して、半島の拠点集落と、海の向こう、北のモシリ(北海道道南)の同じ物見の氏族のところに行くしかないのだ。


交易上の優位性を失わないように、交易上縁のある集落にも分散して一時的に移住することにした。ただ、正直クルマンタは壊滅だろうし、そこより西、おれは安全といってしまったが、ピナイ(秋田県比内)も本当に大丈夫だったか自信を無くしていた。とりあえず、情報を伝えるついでに、西の深緑の王の氏族にミツ・ハ・キミ(新緑の王)とその家族を行かせることにした。彼は、向こうで修業して親族も向こうにいるので大丈夫だろう。


この集落に残る者にも不安であれば、半島の拠点集落の者と交代でも構わないといったが、残りたいと言ってくれた3家族は皆大丈夫だと言っている。

集落の留守を守る家族と、半島の拠点集落からは、この集落周辺に早急に有用植物を植えるような作業を優先させることにした。具体的にはクリ、クルミなどの実をつける樹木の移植。他にも後の交易に役立つように漆など。そして栽培植物をとにかく増やすこと。その作業のために、半島からも交代で集落に戻り作業をさせることにしようと思う。

あとは、まだ小規模ながら噴火は続いているし、狩猟採集場の正確な被害状況はわからないので、調査終了後、どのくらいの家族を北海道側に渡すか決めることにした。


1か月ほどで噴火は小康状態になった。相変らず天高い噴煙が立ち上っているのが見えるが、すっかり白い噴煙になっている。

山のほうの被害状況は壊滅といっていい感じだ。危険なので八甲田の山の頂のほうまで入っていないが、途中の民家のある地点まで行くと火山灰や軽石がかなり積もっている。住民はなんとか無事だったが、あと少し降り積もれば窒息死や圧死もありえそうなくらいだ。


もはや、山腹の森林は完全に枯れると思われる。

山麓も、樹種によってはダメかもしれない。たとえ大丈夫だったとしても樹勢は弱く、実をたくさんつけることができるか怪しい状態になるだろう。

そして、川も雨が降れば泥流が流れて氾濫するだろう。川の恵みもまったく期待できない。


とりあえず、現在の集落周辺のクリやクルミの木はもしかしたら復活できる可能性があるかもしれないので、そのままにするが、急ぎミズナラ、コナラ、他広葉樹は全て伐採することにした。伐採した木材は全て集落に運び込み、空き家になる住居や、塔の下やスロープの下、もしくは大堂の一部に復旧の時のための資材や薪、土器の燃料などでとっておくことにした。

クリやクルミも翌春に芽吹かなかったものは全て伐採し、集落の復旧の時の資材とするように指示した。


そんな中、諦めていたが、嬉しい知らせが飛び込んできた。

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