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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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平和な春のはずが

5月の中頃だろうか、まだ山菜採りの最盛期。

俺もカンチュマリを連れ立って、近くの森に山菜採りに出かけていた。新緑も進んで山菜の種類としてはウド、フキ、シドケ、アイコ(ミヤマイラクサ)、ミズ(ウワバミソウ)などいろんな種類がとれる。小麦粉があれば天ぷらにするのに。デンプン系の粉もので代用できないかな。ただ、高級品のエゴマ油を大量に使うとひんしゅくものになりそうだが。お浸しも美味しいけど醤油が無いのが悲しい。

そんなことを考えながら山菜をたくさんとって、葡萄籠の大きな背負子に入れていく。ただ、この時また失敗したのは、干し物系に使える山菜より、即食べる系統の山菜ばかり取ってしまったこと。カンチュマリは考えて干し物系に向いているワラビなどをちゃんと採っていた。

籠いっぱいに収穫できたので、まだ日は高いが集落に戻ることにした。

集落が見えてきたそのとき、ゴーッと音がしたかと思うと、強烈な揺れが襲った。かなり大きな地震だ。俺は東日本大震災を経験したが、あの揺れに匹敵する揺れだ。ただ、あの時ほど長くは続かなかった。揺れはすぐにおさまった。

心配して急ぎ集落に戻ったが、塔自体は無事に立っていた。大堂も高床式倉庫も住居群もみな無事だったようだ。ただ、塔から地の宮に仮設していたスロープは完全に倒壊していた。もともと仮設で作ったので、柱は埋めておらず、地震にまったく対応していない部分だったのだ。倒壊といっても、正確には倒れただけで部材は折れたりしてないので復旧は容易なようだ。ただ、地震でこんな状態になるのはいただけない。俺が歩いてる最中だったらと思うとこわいので、設計を見直すか、以前のように梯子で上がるようにするか検討しなくては。

まぁそれは後にして今は。

急いで塔に戻る。留守の2人の巫女は無事だった。スロープを使うのは両手がふさがる荷物があるときか俺ぐらいで、彼女たちはめったに使わないが心配だった。大丈夫だからと声をかけて塔の内部を確認しながら屋上に上がり、神々の沸き立つ湖(十和田湖)の方向を確認する。今のところ変化はないようだ。

長老たちに声をかけて、皆の無事の確認と、夜に大堂に集まるように指示を出す。

日が暮れて、大堂に子供とその世話をする人を除いて集落の人々が集まった。

久々に一段高い輿の上から話をする。

まずは被害状況。

建物被害は塔のスロープ以外は無いという。

食料保管系の女性の管理者から、酒類の土器がかなり破損した報告をうけた。地割れと揺れの衝撃で、埋めてある土器も、また地上でまとめて結わえている土器にも被害があったという。各家庭の土器もだ。使われていない尖底土器どうしが転がってぶつかって破損したという事例もあった。調理中の土器が倒れて竃の火が消えて騒ぎにもなったとか。ただ屋外の竃に設置してあったぶんの被害はないという。平底の円筒土器は尖底土器ほど被害を受けていないが、尖底土器がぶつかって破損したものもあるという。

今後は平底の円筒土器と少し安定感のある土器の生産を優先したほうがいいかもしれない。ただ、屋外の共用竃のほうや、焼き石調理ではまだ尖底土器の使い勝手のほうがいいかもしれない。

それと以前から問題になっている、土器作成の本格的な専業化も検討する時代なのかもしれない。今は、わらじや靴など干し草製品と同じように、粘土の採集と焼成作業は共同でやっても、形を作ったりするのも各人、各家庭でやっている部分も多い。多少の公共財の土器を一緒に作ってるという状態だ。

それを職業化するとなると交易品ではないので、その職人の食糧や生活物資の供給をどうするかという問題がある。土器の代金として食料や生活物資を交換する形になるのだが、とうぜん、自然災害などがあったときは急に需要が増したり供給が追い付かなくなる問題もある。

ちなみに、竃の火が消えて騒ぎになった家があったのだが、竃の火を消す場合というか、竃の火は故意に消してはいけないという習慣がある。自然に消えるのを待たなければいけない。だから、土器が倒れて中の水で囲炉裏の火が消えたのはほんと大騒ぎになった。

理由は自然に消えるまで待たないで水などで消すと家族が絶えるといわれている。ちなみに、これは日本でも、大陸でも現世のつい最近まで言われていたことで、縄文時代ですでにその風習があったとは驚きだった。

次に集落外の状況だが、確認できる範囲では被害はない。それ以上はまったく情報がない。

集落から見える範囲では津波の被害もなかった。

俺「津波の被害がなかったということは、それはそれでよかったが、そうなると神々の沸き立つ湖(十和田湖)か八甲田山の火山活動の関連で起きた可能性がある。今後一層、火山噴火に警戒しなくてはいけない。噴火が無くても同規模の地震が起きてくる可能性も高い。」

俺は交易系長老を呼んで、各地の情報を集めるよう指示した。特に東西の海での津波被害、そして南のほうの揺れの情報。クルマンタ(秋田県大湯)、ピナイ(秋田県比内)、トワリまたはその下の集落(青森県十和田市)の情報を特に集めるよう指示した。

なによりクルマンタの呪術師カント・ヨミ・クルからの情報が欲しかった。

俺が前の夏に彼に会って、夜話し込んだ中に地震の震央を予測するための策、うまくいくかはわからないが話してあったのだ。そのためのものは俺も用意してこの集落に設置してあった。それはこの集まりの前に確認した。

震央を予測するために作った、本当に役立つかわからないものだが。わざと不安定な土器を並べただけの、ただそれだけのものだ。地面に浅く刺した土器は最初の揺れで揺れのきた方向に倒れるはずだ。本当にそうなるかはわからなかったが、何もせず待つよりはと思ったのだ。

その土器の半分以上が神々の沸き立つ湖十和田湖の方向に倒れている。揺れはその方向から一気に来たのかもしれない。もし、クルマンタでも同じように十和田湖を向いて倒れていれば、この方法でおおよその震央がわかるかもしれない。


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