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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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春の訪れ

厳しい冬も少しだけゆるみはじめる春分がやってきた。

温暖な縄文時代、といっても今は寒冷化に向かっているようだが、俺がいた現世のころの青森よりは雪も少ないし、気温も高めだ。それでも春分の3月21日はまだ冬といっていいくらいの雪がある。

あとすこしでカタクリの花が咲く。その前後ぐらいでシーズン最初の採集イベントのギョウジャニンニク採りがある。

呪術師は春分から15日後をギョウジャニンニク日と予想して発表した。例年より2日遅い予想日だという。

熊猟は続いているが、熊が冬眠の穴から出てしまうと、この時代の弓矢、槍などの性能ではなかなか仕留められずにいる。かわりに雪が固まって歩きやすくなるので、ウサギやヤマドリなど小動物の割合が増えてきた。

塔も屋上で導きの火を灯す日が多くなってきた。集落内も雪が残っているが、歩く場所は融けてぬかるんでいる。

竪穴式住居に積もった雪も、放置しておくと雪解けで周りから水がしみてくるので、みな雪かきをはじめている。厳冬期は積もるにいいようにいていた。なぜならそのほうが温かいからだ。竪穴式住居の周りの雪かきをして、溝をきちんと掘り直して、中への水の侵入を防ぐ。溝堀をきちんとしないで積もったままにしておくと、屋内が水浸しになってしまうという。そんな間抜けはいないというが、多少タイミングがずれるとやらかしそうな失敗だと思う。

平和な春だった。雪解けと同時に出てくるギョウジャニンニクに始まり、次々山菜が採れ始める。

いろいろなことのはじまる春は気持ちもいい。

ミナトマリが行った半島の拠点集落からも定期連絡が来た。

冬季にこれといって知らせがなかったが、定期連絡以外に知らせがないことは良いことだ。冬場は皆、無事に過ごすことができて、食料、資材備蓄状況も足りなくなることはなく、問題なかったとの報告を受けてみな安心した。

そんな平和な日々が続いて、雪解けもすっかり進み、雪は神々の白い峰々といわれる八甲田のいくつかの頂周辺しか残っていない。その白い残雪の下の山肌が明るく鮮やかなブナの新緑に染まるころ、それは突然に襲ってきた。


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