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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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4.独りの食事はつまらない

少女「私の名前は天のキツネ」


カンチュマリというらしい。

カンチュマリで天のキツネと訳されるということは、やはりアイヌ語も少し入っているのか、それともアイヌ語より古い源典となる言語なのかもしれない。アイヌ語で天空はカント、キツネはシュマリだったと思う。おそらくカント・シュマリを繋げてカンチュマリなのだろう。

さっき、「その腕の模様は?」と聞いたときはキャナと言った。

キャナは日本語でもともと古い言葉で腕のことをカイナと言っていた。今でも東北地方の一部では腕のことをキャナと言っている。もともと東北地方はアイヌ語由来地名が多い。でもアイヌ語圏ではなかったはずだ。いやもっと言うとアイヌ語自体はもう少し新しいはずで、北海道南西部までは東北の縄文文化圏のはず。まだ決めつけるのは情報が少ないが、おそらく日本語アイヌ語双方の原点も含まれているのかもしれない。


ちなみに腕の模様は生命の木、ブドウの蔓文様を描いてあって、季節で変える呪術用で入れ墨ではなくて消せる何かの顔料のようなもので描かれているらしい。


俺「カンチュマリ、それと頭を下げ続けるのはもうやめてかまわない。しっかり顔を見て話しをしましょう。」


少女「恐れ多いことですがわかりました。」


そういって顔を上げてくれた。

少女というには少し歳が行ってるかな?どうも年齢がわからない。

若く見えるといえば15,16歳ぐらいにも見えるし、年に見えるとすれば20歳前後にも見える。

うぅーん、薄暗いせいだ。きっとそうだと自分を納得させてしまった。

そう、縄文時代とは言え女性に歳を聞くのは悪い気がしたからだ。


カンチュマリは部屋を出ると先ほどから付いてきている2人に声をかけると、「こちらへ」と言って案内してくれた。


部屋を出て、外に出るとそこはもう真っ暗だった。


この人の背丈もある高床式のカンチュマリいわく夏の地宮は下に下りる階段もスロープもない。飛び降りるのかと思うと、先ほどの2人の少女が、大きな丸太のようなものを担いだ男たちの一団を連れてきた。

最初の男たち3人は、丸太は2本、それもかなり太く長さが微妙に違う2本を蔓で束ねてある。そしてそのあとから、10人ぐらいで2本の丸太を担いできている。この2本の丸太の間隔は1メートルくらいあり、中央が井桁に組んでその真ん中は大きな薄い丸太を加工して布いてあって、人が乗ると神輿のようになっていた。

最初に到着した3人の男たちが高床式の夏の地宮のテラスのへりに、その長さの違う2本の丸太を建てて、地面に蹲るようにそれを支えた。そこに後ろから来た神輿のようなものを担いだ男たちが到着した。ちょうどそれは身長160センチくらいの男たちが担いでいるので地面からの高さは150センチ。2メートル前後の地宮のテラスからはまだ段差が50センチ以上あるように見えたが、それは先に到着した2本の長さの違う丸太が階段の役割を果たすようで楽に神輿の上に乗ることができるようになっていた。

正直、神輿に乗るのは躊躇われたが、2メートルの高さのテラスから飛び降りるのも不安だったので、大人しく乗ることにした。


丸太の階段をおりて神輿に乗ると。本当にゆっくりと男たちは動き出した。


ふと後ろを見ると長い丸太が3本地宮のテラスに斜めにかけられている。丸太の側面には溝が切ってあり、ちょうど階段のようになっていて、そこを女性たちが慌てて登っている。なんだ階段もあるんだ。そしてすぐに土器ごと料理を外に持ち出して器用に頭の上に載せてこちらの神輿の後ろについて歩きだした。


そして塔の上から見えてカンチュマリが大堂といった巨大な建物の前までくると、そこの壁面の一部は大きくムシロのようなものでできていて、中の灯が僅かに漏れている。神輿が近づくとムシロの下のほうは細い棒と繋がっていて、それが2人の少年に支えられて手前に建てられるとターフのようになって入り口が解放された。


入り口は神輿に乗ったまま入れる大きさだった。長い形の大堂の端のほうに大きな入り口がありそこから神輿のまま入るとスロープになっていて、床面は一段低くなっていた。ちょうど神輿の乗っている俺が地面の高さと同じくらいなので1.5メートルは掘られているのかもしれない。その大堂の中には所狭しと人々がこちらを向いて平伏していた。


神輿は台の上に固定された。


男たちは神輿を離れると左右に分かれて、ほかの人々と同じように平伏した。

俺の前にカンチュマリが進み出て、軽く会釈すると、今度は人々に向かって語りはじめた。

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