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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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27.アスファルトの人

翌朝カント・ヨミ・クル(天を読む人)の家を出て西へ向かう。カント・ヨミ・クルは途中まで見送ってくれた。


数キロ西へ行くと南から大きな川が流れてくる。俺のいた現世では米代川とよばれていた。その川の上流を越えてさらにその先は俺の故郷があるが、今回は急ぎ集落に戻るべきなので諦める。


南から流れてくる米代川はここで流れの方向を西にかえ、やがて日本海へ注ぐ。同行のアシリ・ウパシ(新しい雪)によると、少し西へ向かった先にいくつか大きな交易系集落があるという。

ピナイ(比内)の川が合流するあたりから川の流れが緩やかになり舟での移動ができるという。船といっても大きな丸太をくりぬいたカヌーのような造りらしい。

その集落は俺たちの物見の一族、塔の集落とは交易で友好関係にあるというが、そちらの訪問も次の機会にすることにした。一応、次の交易の機会に上流側でもあるクルマンタ方面のことを話しておいたほうがいいだろう。


大きな道はその交易集落から北東の方向にのびているが、俺たちは最短ルートで北に向かって歩いている。現在の東北自動車道の走るルートに近い。もちろん橋もトンネルもないので、迂回する場所や峠もくねくねと曲がりくねった道だ。間道といわれて獣道のようなイメージをしていたが、思っていたよりは歩きやすい。南八甲田を越えたときの山道よりは快適な道だ。

峠を越えたあたりで大きな道と合流する。米代川の中流の現世の大館方面から入る道のようだ。本来はその道がメインであり俺たちが歩いてきたほうは間道にあたる。


川沿いに温泉があり、そのあたりで野宿することにした。現世でいうところの碇ヶ関温泉から大鰐温泉の付近と思われる。今日は少し距離を歩いたので温泉はありがたい。


ここでも近くの集落民が川沿いに小さな露天風呂のようなものを作っている。もう夕方なので集落民の姿は見えない。こういった露天風呂は集落民だけでなく交易で訪れた人も自由に使ってもいいのだそうだ。俺たちが露天風呂に浸かっていると、交易人の一団が到着した。


彼らは手早く背負子の荷物を降ろして、厚手のあんぎん織りの敷物を布くと、もうそれで野営の準備は終わったようで、すぐにこちらの露天風呂に入ってきた。

すると1人がアシリ・ウパシに親し気に話しかけてきた。

アシリ・ウパシ「彼らはアペルイ・ト(燃える土)アスファルトの交易で我々の集落に向かっているそうです。団を率いているのはウコ・アプカシ(往来する)です。」


「はじめまして、オホシリといいます。物見の一族、塔の集落から来ました。」


「アペルイツゥタリ(燃える土の一族)のウコアプカシです。」

たぶん秋田県の潟上市の近くの人たちじゃないかな?それとも、もっと遠くの新潟?いずれ日本海側でアスファルトは産出したと思った。アスファルトだけでなく原油も取れるのだろうか?


「アペルイ・トは大事な交易品ですね。ウコ・アプカシさんが採掘もするのですか?」


「いえ、私は交易専門でして、採集のほうは別です。」


「アペルイ・トというのはどんな感じで採集するのでしょう?」


「山の崖や川の水で削り取られた崖なんかでよく見つかります。」


「やはり名前の通り火が燃えるのですか?」


「多少は燃えますが、みなさんのお好きな木を燃やした時のような燃え方はしませんよ。」


「ドロドロして臭い燃える水はありませんか?」

アスファルトともに産出する原油もあるはずだが。


「あまり使い物になりませんが、アペルイトの近くに染み出してきたり、川や湿地に浮いたりしているのがありますよ。」

よし、異世界確定の暁には石油精製も視野に入れよう。

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