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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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20.カルデラ

活発に活動中の火山の近くで寝るのは躊躇われたので、南八甲田寄りの森林地帯で一夜を明かした。

夏だけど凶暴な動物が来ないよう焚き木をして交代で見張りをしながらの夜だった。


早朝、神々の沸き立つ湖と彼らが言っている十和田湖の外輪山に向けて出発した。


外輪山に近くなると、木々は葉を落とし、周囲は火山灰で覆われた不毛の大地になっていた。火山灰の厚さは15センチ程度で思ったより厚くない。それでも、降り積もって間もないようで柔らかく少し早足になると細かく煙のように舞い上がった。ほどなく外輪山のふちに到着した。


その光景に衝撃を受けた。


十和田湖は大きな2重カルデラ湖で外側の大きなカルデラは現世から13000年前の噴火、今が5000年前だとして、今時点から8000年前には出来上がっている。今立っている外輪山はその時にできたはず。


そして2重カルデラ湖の内側のカルデラが今回の問題なのだ。


現世では中のナカノウミと言われて十和田湖の最深部のある所、今目の前に見えるその場所には、小高い山が形成されてその不気味にずんぐりした山の頂の火口は噴煙を吐いていた。

まだ噴火していなかった。


この火山が爆発的なプリニー式噴火を引き起こし十和田湖最深部となるのだ。


13000年前の大噴火では八甲田山を越えて青森まで達する火砕流が発生したという。

今回はそれよりも一回り小さい噴火で俺たちのいる集落へ直接の被害はないだろうが、十和田湖の東側、風下側の被害は甚大だろう。

アシリ・ウパシに聞くと東側には大きな集落も多数あるという。あれだけの火山活動のさなかでもすぐ近くのトワリという場所にも人が住んでいるという。さらに平原部には多くの集落があるという。すでに降灰や泥流に悩まされているが、それでも必死に暮らしているという。

現世では十和田市や五戸、四戸のあるあたりだと思われる。それらの人々が難民として押し寄せてきた時のことも考えなければいけない。もちろん、風向きによって降灰もあるかもしれない。それによりこちら側の範囲でも泥流被害も起きるかもしれない。


もう一度カルデラをよく観察する。カルデラ内にはまだかなりの水が残っている。青白く濁った水だ。中央の火山に近い部分はグレー色に白濁している。外輪山と水面との標高差を見ると現世の頃より水位は高いように思える。これらが噴火によって押し出されて津波のように山を下る可能性もある。

現世の十和田湖のアウトレットにあたる奥入瀬川の方向を見てみる。やはり、現世の頃より水位が高そうだ。おそらく噴火の噴出物が大量にカルデラ湖のほうに流れ込むたびに洪水のように奥入瀬川を濁流が襲うのだろう。現世の緑あふれる深緑の渓流とは程遠い景色だ。


衝撃を受けて不安そうにあたりを観察し続ける俺を見て皆が不安に感じていたのだろう。誰も何も言わなかった。たぶん言えない雰囲気だったのだろう。

カンチュマリが最初に言葉を発した。

「神々の怒りはあるのでしょうか?」


俺はカルデラの真ん中にそびえる火山から目を離さずに呟いた。

「あぁ近いうちに」


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