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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
179/182

179.外国人居留区1

アスカの集落には半日もかからず到着した。途中に検問が何か所かあったが、どこも木札を見せると、門番はそれを木簡に書き写してからすぐに返してくれて何の質問もされずに通してくれた。

集落は少し小高い丘のようなところにあったけどヤマトの他の集落で見られるような堀はなく土塁もほとんどない、木の柵でぐるりと囲まれただけのものだった。不思議なのは警備の兵が多く、しかも外側だけでなく内側も警戒しているようにも見えた。

「ヤマトからこちらに来たオホドといいます。」

集落入り口の木戸で木札を見せる。

「うむ、では取次の者が来るまでそこで待つように」

俺は木戸の横にある東屋風の建物のなかで丸太の椅子に座った。

「オホドさんですね。」

若い女性から声をかけられた。

「はい、出雲から参りましたオホドと申します。」

見るとかなり若い女性だ。

「では、こちらへ。」

「オホドさんはもちろん東漢語など海の外の言葉はわかりませんよね?」

「はい、交易をしておりましたので、東漢、そういった言葉があることは知っていますが、直接聞いたことはありません。」

転生時からどんな外国語でも理解できるし話すことができるけどここでは黙っていたほうがいいだろう。

「ここでは東漢語が使われることがありますが、絶対にその意味などを詮索しないようにお願いします。お仕事はこれから紹介します人の護衛と監視になります。鉄剣が支給されますが、集落内にいる間は絶対に肌身離さず持つように。それと勤務時間は日の出から日没まで、勤務時間以外は集落の外に宿舎があるのでそこで寝泊まりしてください。」

若いながらにもまくしたてるような説明に思わず引いてしまった。

集落の建物の様式はこの時代とは思えないものが多かった。土と石でできた壁があり屋根のある、もちろん屋根は草ぶきだけど・・・そういえば中国や韓国の古民家にも似ている。そして、集落内はひっそりとしていた。

1軒の民家の前まで来た。警備兵が1人立っていたが、女性が何かを言うと鉄剣を置いて立ち去った。

「劉麗さん、専属の警備の者が来ましたので外に出られますよ。」

若い女性は中に漢語で声をかけた。

劉麗・・・若くてきれいな女性かな?と思ったらかなりの年配の女性が出てきた。

「やっと外に出られるか。全く、年寄りを家に閉じ込めるとは。」

「こちらはオホドさん、今日から劉麗さんの専属警備でつきますので。」

「ではオホドさんお願いします。そこの鉄剣をもって劉麗さんの行くところについて歩くだけでいいです。本来はその日あったことは詰め所に詳しく報告が必要ですが、劉麗さんのはいいです。面倒ですから。言葉もわからないでしょうから劉麗さんから何か要求されるようなことがあっても基本的に無視でいいので。どうしてもしつこいようなら詰め所に連れてきてください。」

いまいち仕事の内容が見えてこない。警備といっても集落内ではさほど危険があるとは思えないし、本来は報告とあったから何らかの監視なんだろうけど。

「あんたも、言葉ができないのかい?」

劉麗さんが話しかけてきたけど、一瞬答えそうになったところをぐっとこらえて無視することにした。

劉麗さんは家の中に入ると薄い木や竹でできた木簡と筆と墨壺を持って出てきた。俺に墨壺を渡すと何も言わず歩きはじめた。

集落内をぶらぶら歩く。

集落の中の大きな栗の木の下まで来ると、栗の木に背もたれ木簡を左手に、筆を右手に持って何かを書くそぶりを見せた。

おれは慌てて墨壺を筆の近くに寄せた。

劉麗さんは一瞬驚いたような顔をしたけど、かまわず筆先を墨壺の中に入れると筆先にわずかに墨がついているのを見つめると、木簡に書き始めた。

「春風起爽爽、蟄虫出哀鳴・・・・風飄飄動纓」

うーん?後漢の末期、曹植の詩に似たようなのがあったような・・・?

だけど後漢の末はまだ先だったはず。

しかも達筆。

劉姓ということは元皇族だろうか。

いろいろな疑問がわきつつも黙ってそれを見ていた。

曹植の詩は確か春のうららかな日で恋人を思って結婚までできるかなという不安を詠った感じだったと思うけど、劉麗さんの詩は、ようはせっかく家から出たけど、自分は何もやることがなくて風と時間だけが空しく過ぎていくような内容だった。

なんとなく悲しく思ってしまう内容だった。

「あんた、ほんとは言葉も文字もわかるね」

いきなり劉麗さんから話しかけられた。

慌てて周りを見回して誰もいないのを確認してから、軽く頷いた。

「なら、ばあさんの愚痴を聞いておくれ。言葉がわからない輩に愚痴ってもしょうがないけど、言葉がわかるあんたなら・・・まあ話したところでどうなるわけもないだろうけど、それがわかっていて話すのが愚痴だからね。しょうがないと思って聞いておいておくれ。」


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