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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
171/182

171.旅の準備

東の旅から戻ると、集落の交易を担当する者たちから報告があった。西からの交易品が一部の種類で若干量だけど減少してきているという。

「それでは、交換比率は高くなってしまったのですか?」

「いえ、全体的にみると問題ないのですが、品目によって大きな差が出てきています。少なくなったものはヒスイ、夜光貝など装飾品が主でして、そちらは、むしろ毛皮など実用品がそれらと高く交換できるのでいつも通りです。ただ青銅や鉄に関しては著しく数が減り高騰していて手が出ません。」

北の人々の多くは、まだ青銅器や鉄器の優位性には気が付いていない。優位性に気が付いているのは交易集落の長や交易担当者だけだ。まだまだ石器や土器と比べてまだ高価すぎて、一般には日常に使うなど考えが至っていない。

天野がこの時代まだ北方に鉄器や青銅器があまり入っていないことに配慮して流通量を減らしたのだろうか?

もう一つの可能性。

戦争のための準備?

ヤマトタケルの東夷東征は景行20年から40年、つまり西暦100年前後だと思われる。そろそろ西暦100年だ。

俺が最も警戒する最初の歴史的イベントが起きる。

ただ、ここから歴史の調整はさらに慎重さが求められる。

俺はこの世界がまだ過去の世界だという考えに若干の疑いを持っているが、天野は確信をもって過去の日本だと言い切った。

俺も念のためその方向で時代を進めるべきだとは思う。

だとすると、ヤマトタケルの東夷東征はもっとも警戒するできごとのひとつだ。

そして西暦107年には倭国の帥升が後漢に朝貢した。次の史書に書かれるまでは多少の空白期間はあるものの、神話を含む歴代天皇の系譜、卑弥呼の存在、実際の遺跡などとの辻褄合わせがさらに難しくなってくる。

やはり、またヤマトに行き情報収集と天野と今後の話をしてくる必要がありそうだ。

歴史に関する部分は隠して、交易品の物流の変化とそこから予想される戦争について家族に相談した。

「集落の運営は今のところ他の長達に任せても問題ないかと思います。私もイキを父に会わせてやりたいので一緒に行きます。」

「旅につき合わせて申し訳ないが、一度出雲アシワラナカツクニまで行き、そちらでイキと共に少し過ごしてもらいたい。その間にヤマトへ行き情報収集をしてこようと思っている。場合によっては途中で引き返すこともあるかもしれないが・・・」

正直、ヤマトタケルの東夷東征の時代が正確にはわからない。交易上のモノの動きからもう始まっているとは思えないが、準備は始まっているだろう。そして、どこまで北上するのか?どのルートで?

この時代の主な交易ルートは日本海側の沿岸だ。太平洋側もそれなりのルートはあるにはあるのだが、戦略上の拠点となりそうな場所は少ない。渡るに難しい大きな河川が多すぎる。川幅の狭い上流は急峻な山岳地帯だ。平野部も治水が難しい氾濫原だ。分断する要素が多く、ヤマトや国譲り前のアシワラナカツクニのような連合はなく、単独の独立集落国家ばかりだ。そのような集落を傘下に治めたとしても実益は少ない。

しかし、古事記や日本書紀では太平洋側をまわり関東を経由して蝦夷、つまりこの北の大地に届く地まで来て、今度は内陸を戻るというルートなのだ。

過去の国譲りや戦争で逃れた有力者の拠点もあるにはあるのだが。ひっそりとおとなしくしているところに攻め込むメリットはないはずなのだが。

もし、日本海側ルートで北上されて途中で鉢合わせなんてことになったら大変だ。俺一人ならいいが、妻と子供もいる状態では切り抜けるのは大変だ。それでも出雲まで行けばおそらく安心だろう。

「父上、わたくしもおじい様にお会いしたく思います。ぜひ、連れて行ってください。」

戦争が起きるとどんな不測の事態が起きるかわからない。集落にいたからといって安全とは限らないだろう。敗走した兵士や行き場を失った住民が押し寄せる可能性もある。ヤエが集落にいてもおそらく対処はできないだろう。はっきり言って大規模な遠征戦争の結果など、まだこの北の地で経験した者などいないのだから。

むしろ一緒にいたほうが安全か。

「わかった。ただ、不測の事態に備えて、神託の準備をする。神託が出来上がったらすぐに出発するからお前たちも準備をしておいてくれ。」


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