表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
168/182

168.博士

残り3人は漢の洛陽から来たという。


3人とも元高級官僚で、うち1人は五経博士に推挙されるくらいの人だったらしい。

五経博士というのは儒教における詩・書・礼・易・春秋について教導する官職で政治にも少なからずの影響力を持っている。最初の統一国家秦の時代から皇帝の権限は非常に強く皇帝一点に集中した中央集権態勢が敷かれていた。漢の時代に入ると儒教を事実上の国教にしたために、皇帝に様々な意見を国教にしたがってという形で具申したり、後の高級官僚を教育する立場の五経博士は大きな力をもっていたと記憶している。

漢の高級官僚ならば詩・書・礼・易・春秋だけでなく兵法書も含め当時の最先端のことを諳んじることができるだろう。

あと200年早ければ中国に行って会いたい人物がいたのだが。すでに、西暦100年、俺の尊敬する太史令の司馬遷が亡くなって200年ぐらい経ってるのだろうか。

ちなみに司馬遷というのは、前漢の武帝の時代の太史令であり、太初暦の制定と史書の編纂で史記を完成させた人物。俺のもっとも尊敬する歴史上の人物だ。正直、もう少し早く時代に気が付いていれば中国に渡り会いに行こうとしただろう。


代表して話す1人は、さすが官僚になれるくらいの頭脳。倭語も縄文アイヌ語もすでにペラペラに喋ることができるようだ。


「こちらではツイマ(遠い)と名のっておりますが、本名は同衍トンエンです。」


「もしかして同姓ということは司馬遷の子孫の方ですか?」

司馬遷ファンとしてはつい聞いてしまった。


「はい、もう数代前ですが先祖は太史を務めた司馬遷といわれています。しかし、先祖をご存じなのですか?」


「史記に大変興味がありますので。」


「こんな最果ての地で史記をご存知の方に出会うとは。」


同姓は司馬遷が自分の書いた史記の内容で子供たちに累が及ばないように司の字に棒を一本足して同、馬の字にニスイを加えて馮の姓を名のらせたといわれている。


「ただ、史記に関しては司馬遷の娘が嫁ぎ先に保管して、その息子の楊惲ヨウウンが広めました。楊氏は外戚といわれますが、私としてはそちらが本家本元と思います。史記の存在が広まって、出世に利用しようと同氏と馮氏はそれぞれ再び司馬遷の子孫を名のるようになっただけです。」


「同衍殿はあまり史記をお好みではないと?」


「いえ、史記自体は子供のころから諳んじて何を聞かれても答えられるように読まされていましたが、けっして嫌いな読み物ではなかったのですが・・・。

今の漢においては、皇帝の外戚などの勢力と、逆に皇帝個人の好みを知り尽くして取り入った宦官の勢力が争いを続けています。

史記にはそういったことの弊害も全て書かれています。他にも五経である詩・書・礼・易・春秋も同様なのですが、それらはただ知識をひけらかす道具でしかありません。今の官僚はそういった先人の教えを、それぞれの勢力に取り入るための道具としてだけに使っているのが現状なのです。そういう私も五経博士に推されるほどになりましたが、双方の勢力の板挟みになり、もう嫌気がしてこの国に逃れてきたのです。ですから名前も変えたのです。」


「それは失礼しましたツイマ殿」


「でも、思いがけず史記を知る人に出会えてよかったです。」


「ところで、高句麗を出てからの様子をお聞かせください。」

朝鮮半島の政治状況、そして、最新の八山戸ヤマトの情報はこれからの行動には必須の情報だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ