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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
154/182

154.やっぱり北がいい

俺は東征開始後、最初の拠点を置いた安芸に入ると、カムヤマトイワレビコ、後の神武天皇と別れて出雲へ向かった。そして建設中の巨大神殿の建設の監督と実際の作業状況を見て安全のための設計、仕様の変更などを指示して、そのまま北に戻った。

神殿は最初の柱が打ち立てられて、次の柱を継ぎ始めて一つ目の金輪が填められて楔を打って固定しているところだった。思った以上に頑丈にできそうだ。


天孫たちの軍の半数がいなくなったので、作業の人員的にはきついが、十分な報酬としての食糧や鉄、青銅器の供給があるので作業は順調だ。

正直、東征の状況によっては建設がとん挫しかねない不安はある。東征軍は安芸に7年近く滞在するだろうから、できればそれ以内に完成させたいところだ。


久々に深緑の王国に帰還すると、交易で景気が良いのか大量の勾玉、貝製のアクセサリーが入荷していた。交易先も縄文中期には200kmがせいぜいだったのが、距離が大きく伸びて場合によっては500km以上は移動するようになった。北の産物が、舟で西日本へ運ばれるようになった。主な交易品目は毛皮だが、他にも漆、昆布、海産干物のアワビ、ナマコなども西へもたらされ、西からは翡翠製品、貝製品、布製品、稀ながら青銅器、鉄器も入ってくるようになった。


相変らず普通の集落の見た目や暮らしぶりは縄文時代そのものに見える。

なんとなくホッとする。弥生文化の仕事に追われた殺伐とした感じがないのだ。もちろん北の縄文人、いやこれからはエミシといったほうがいいのかもしれないが、我々も追われるものはある。自然の季節の移ろいだ。でも、人に追われるのより、大自然に追われる暮らしのほうが、幾分か精神的に穏やかになれる気がする。人よりも厳しいが与えてくれる恵みの温かさが癒しを与えてくれるような気がするのだ。


北海道に至っては、縄文文化からアイヌ文化へと移行し始めた。より自然との共生に磨きがかかった。俺が2000年前以上に出会ったコロポックルたちの生活にも似ているが、それよりも人間的でありながら、自然を敬う姿勢は同様という感じだろう。


ヤエノコトシロ改めヤエは妻として巫女として俺が留守中の集落運営をしっかりとこなしてくれていた。父である大国主神の息子として当初は育てられてきたので、集落運営も不安なく任せられた。

長い留守だったが、旅の顛末を話して聞かせて、何夜かを夜の更けるまで一緒に過ごした。


俺の場合、転生不老不死者といっても、多少子供ができにくいが、絶対できないわけでもないし、父親だから乳を飲ませることもないから子供が突然死ぬことはなかった。寿命も他の集落民と変わりなかった。ただ、自分の血は特殊で毒あることはウェンカム(悪い熊)と対峙したころから知ってはいた。それでも、傷のふさがりが早いから、誰かを傷つけるようなことはなかったのだが、アマテラスこと天野照代の母として過ごした2000年以上は本当に辛かったと思う。まあ、その辛さがしたたかで強い卑弥呼を作り出すのかもしれない。


不老不死の転生者同士なら問題なのかもしれないが、俺も天野も初見の時からそんな気を起こさせない雰囲気だった。嫌いだとか魅力がないとかではなくて、なんだか兄妹のような感じでしか見られなかったのだ。


それに、俺としては、最初から女性や母として強いというよりは、男としての強さを持ちながら、女性としての心根の美しさを持つヤエのほうが好みだ。

西の生まれのせいか、ヤエはエミシと比べると色白だが、なんとなく転生したころの最初の巫女のアシリクルに似た雰囲気を持っていた。

まあ、今までの傾向としてはそういう女性に惹かれて結婚することが多かったような気もするが。


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