151.東征開始
「この戦いは、この先2000年を決める大事な戦いである。我らは拠点を移し、東を目指す。全ての鉄器、青銅器を武器に変え東征の準備を行え。」
アマテラス改め卑弥呼こと天野の号令により、集落連合は鉄器、銅器の供出をはじめた。
なるほど、九州地方の鉄器や銅器の出土は畿内より少ないのはそのためか。
しかも、卑弥呼の少し前に一度集落の多くが衰退している。
東征による民族大移動か。
だとすれば、理由が欲しいところだが、結局、史料でも理由がないから東征自体が疑われる歴史イベントになっている。
「卑弥呼様、やはりこの規模の東征ですと時間がかかり過ぎます。なんせ集落大移動ですから。途中で拠点を作りながら進まないといけません。古事記でも、途中3か所ほど、長いところでは7年もかけながら移動しております。私としてはそれだけ国を空けるわけにはいかないのですが。それに葦原中国の神殿建設の設計・監督も必要です。特に来年は柱の金輪を継ぎはじめる大事な工事が始まります。」
「では途中の拠点に着いたら一度帰るようにしては?7年もあるなら大丈夫でしょ。」
はあ、とにかく東征に付き合わされるわけだな。
「とにかく、お願い。失敗したらそれこそ歴史の改竄よ。」
アメノトリフネはカムヤマトイワレビコと名前を変えた。
俺はなんとなくしか覚えていなかったが、天野がしっかり名前を憶えていた。
とりあえず現在の広島県である安芸までは同行することにした。
北九州には天孫自体は居なくなっていた。留守の長が数人と交易人がいるだけだった。戦闘らしい戦闘もなく制圧。3分の1をここに残して、安芸(広島県)に進軍する。
安芸に集落を拓き、一度拠点を整える。
この時点でサルダヒコとして従軍していた俺は、安芸に着いてすぐに葦原中国に向かった。そこで巨大神殿建設の現場指示を行う。
ここまで来て、天孫側にも動きがあったようだ。
駐留していた天孫軍の半数以上が移動し始めた。
ああ、国譲りから立て続けに厄介ごとに巻き込まれる。
失敗したなー。
とりあえず、東征は途中で7、8年の拠点づくりをしながらゆっくり進む。
だから、神殿建設の設計指示が終わったら、一度国に帰ろう。
やっぱり北の大地が恋しい。
あとから聞いた話だが、そのころタカマガハラのある日向から船団が出発した。
当初、タカマガハラに残る天孫たちに届いたのはカムヤマトイワレビコ率いる国籍不明の軍が進軍という情報しか伝わらなかったらしい。
船団はこのカムヤマトイワレビコ率いる国籍不明の軍を攻撃するために出航したが、カムヤマトイワレビコがアメノトリフネだとわかり、さらにアマテラスが生きていて歴史を予言して指示したと聞き東征軍に加わった。




