150.歴史イベント
天野はアメノトリフネを説得している。
「あなたは母さんを助けてくれた心優しい神様よ。だから辛いかもしれないけど、名前を変えて兄弟たちを退けてヤマトの国を興さなければいけないの。平和を愛するしっかりした国はあなたじゃなければできないの。」
本心であると願いたいが、タケミカヅチもその他の天孫も自分の子供たちだろうに。
「兄弟たちはね、実際殺すまでしちゃだめよ。それぞれ地方の長にして治めさせるようにしてね。」
「母様はどうするのですか?」
「私はここに残り、あなたの活躍を聞くのを楽しみにしているわ。」
「私はタケミカヅチ殿と違い、一軍を率いたことはありません。私一人ではできません。」
「大丈夫よ。ここにいるオオキミ様が手伝ってくださるわ。」
おい、勝手なことを言うなよ。
「私はこれでも北の一国の長です。南の国同士の争いにこれ以上関わるわけには」
と言いかけたところで、天野に遮られた。
「サルダヒコ、そうサルダヒコが必要よ。でも、そんな名前の人は私の知る限りこの辺りにはいないわ。」
「オオキミ様、どうせ北にお帰りになるのでしょう。アメノトリフネがいなければ舟も使えず、陸路で東北までは大変よ。」
おいおい、東北なんて言葉ももう2000年以上聞いてないぞ。
「途中でサルダヒコが見つかったらバトンタッチしますからね。」
天野が顔を寄せて小声で話す。
「そんな人は出ないわよ。それが私たちに課せられた使命のようだから。」
俺も小声で話す。
「そのままあんたみたく伊勢に幽閉されるのは嫌だからな。」
なんか大ごとだ、集落連合の武装した人の数は尋常じゃない。
大軍だ。
しょうがなくヤマト(八山戸)の新集落のある生駒山地の麓までという条件付きで引き受けた。
俺は天野に顔を寄せて小声で話す。
「卑弥呼のあとはどうするつもりだ?」
「中国に行くわ。向こうで仙人になるつもり。それなら不老不死でもやっていけそうな気がするの。すでに、1回行って確認済みよ。それだから、今がおおよそ何年かわかるし、それに合わせて歴史イベントを組み上げているつもりなのよ。」
なるほど、調子よくやっているようでいろいろ考えてはいるんだな。