148.転生者
次話投稿は数日空けて1月20日の予定です。
アマテラスを幽閉先の岩戸から救出して、話を聞くことができた。
転生前の名前は天野照代、年齢は16歳。転生時も同じ容姿で年齢も同じ15,6歳に見えたので、自分が転生者だと気が付くまでかなり時間がかかったらしい。
アマテラスは本名のせいで子供のころからそのあだ名で呼ばれていたから、そのまま名乗ったという。
縄文時代か石器時代のような暮らしで、最初、人々に馴染めず大変だったという。俺と同じで集落には神として呼ばれたらしいが、何のために、何をどうすればいいか全くわからなかったという。
俺も自身に起きたことを話した。
天野は転生してしばらくたって、世話になっていた集落の長の息子と結婚したという。なかなか子供は授からなかったが、ようやく1人息子が誕生した。しかし、自分の乳をあげると突然苦しんで死んでしまった。こわくなって、次の子供は乳母で育てようと思ったが、子供はできなかった。自分の容姿は変わらず、夫はどんどん歳をとっていきやがて寿命がきて亡くなっていった。次の夫との間に子供ができたが、今度は乳母にお願いして大きく育ったが、同じように、年を取りやがて寿命が尽きた。
夫も子も作らず過ごした数百年もあったが、やはりひとりきりに耐えられず、子供を作り育てても死んでいく。
ただ、ここ数百年の間にいろいろわかったことがあるという。
不老不死の血は猛毒だが、直系の子供の中には耐えられる者がいる。
不老不死の血肉の毒を耐えられた者は不老不死ではないが寿命を200年近く延ばすことができる。
ただ、その死にざまは悲惨だ。突然、体が崩れ落ちどろどろの液体になってしまうという。
これを最近知って、罪悪感に苛まれていると、時同じくこの事実を知った息子や孫たちに岩戸に幽閉されたのだ。
「雄大様、ここからが一番大事なことです。ここは間違いなく過去の世界です。でも、決定的に何かが欠けています。私が居なければアマテラスもタカマガハラもスサノオも神話も何も生まれてこないのです。」
「それは、どういうことですか?」
「神話が生まれる時代になっても神話が生まれない、だからぎりぎり待って神話と同じなるようにしてきたんです。そういう噂も流しました。出雲の件も、神話以上に話が拗れて進まなかったんです。そうこうしている間に岩戸に閉じ込められてしまって。」
「もしかして?」
「そう、重要人物が欠けているんです。だから、場合によっては、神武東征や卑弥呼もやらなきゃいけないかもしれないんですよ。」
「そうか、俺たちがいるから歴史が欠けているのか、歴史が欠けているから俺たちが呼ばれたのか、そのどちらかというわけか」
「私は卑弥呼まではやってもいいけど、有史は苦手よ。有史ならまだ三国志のほうならいけるけど。あとはお願いできるかしら?」
「お願いされても、何が欠けているかわからないことがあるけどなー。」
「大丈夫、自然にそれに対処させられているのよ。」
「それに、オホシリカムノキミだっけ。そのままオオとかオウを使ってると大変なことになるかもよ。それはいいとして、ここ2000年、神話の時代だったからいいけど、ここらあたりから注意しないと歴史改竄になってしまうからね。お互い協力しましょう。」
ずいぶん調子がいいお姐さんだな。
「アメノトリフネ、もういいわよ。」
「さて、母親として謝らなければいけないこともあるけど、私を岩戸に幽閉した子たちに罰も与えなきゃいけないし、東征しなくてはいけないわ。」
おいおい、今度は神武東征かよ。いったい誰にやらせるつもりだ。