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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
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147.救出

建設計画がまとまって3年目で再び葦原中国へ行く。

結局、大国主神様のお許しがあったというか、そういう流れでヤエ様は神嫁になった。ただ、この度は俺も留守が多いので申し訳ない思いしかない。


今回もひ孫のヒナを連れて行くが、もうたぶん1,2年で兄という言い訳が効かなくなるだろう。今度は弟と紹介してもらわなければいけないが、一度面識のある人には無理だろう。


現地について建設の進捗具合を確認して、他にたたら製鉄の現場も見学して、鉄製のノミや鋸を作って供給するよう指示する。


そして、アメノトリフネに会い、一緒にヤマト(八山戸)に向かう。八山戸は大阪を見下ろす生駒山地のことをいうようで、その山裾の大地にある大きな交易系集落だ。いわゆる教科書でいうところの弥生時代で、周辺の集落ではすでに水稲栽培が盛んにおこなわれていた。


「ここは最近拓いた新しい集落です。ここから船で奴国ナコクに向かいます。」

港へ向かいアメノトリフネの舟に乗る。板綴舟と比べると大型の和船だ。


天候にも恵まれて船旅は快適だ。ただ、風向きが悪かったり、潮流の激しいところで多少時間がかかっている。

瀬戸内の海を西に向かっている。

数日で奴国ナコクの入り口に着いた。


ナとは倭語で野原のように平らかという意味で、俺のひ孫のヒナのナと同じだ。

たぶん九州の福岡辺りだろう。


「ここからは他の天孫に見つかるとまずいので、陸路で参ります。」


山や川をいくつ越えただろう。

途中噴煙を上げる阿蘇山を見た。

十和田湖と違い、大規模なカルデラ噴火は数万年前に終わっている。

それでも、大きな山だから小規模の噴火といっても、この時代の人たちは恐怖だっただろう。


さらに山を越える。

たぶん宮崎か鹿児島か?

陽の昇る方向に海がちらりと見えたのでたぶん宮崎だろう。

現世の頃、大分、熊本までは旅したことがるが、宮崎と鹿児島には行ったことがない。

なので、山河の雰囲気から場所を特定するのは難しい。


急峻な山を慎重に降りていく。

山奥の崖にぽつりと空いた穴。

入り口からすぐのところの大きな岩に阻まれて、人一人がやっと入れる隙間がある。

まずアメノトリフネが中に入る。

「アメノトリフネ様、なぜこのようなところに」

見張りの兵士が声をかける。

「アマテラス様の様子はどうだ?」


「はい、最近はすっかり大人しくなりました。自らの血で鉄格子を溶かして脱出なさろうとすることもなくなりました。」


「トリフネなの?助けて、あなたたちにしたことは謝るから、お願い!!」

そう言って鉄格子に取りすがろうとすると、兵士が棒で突いて鉄格子から遠ざける。

その隙に、俺たちも岩屋の中に入る。

ヒナが鉄槍で兵士を牽制する。


鉄格子に扉などなかった。どうやって作ったのかはわからないが、内からはもちろん外からも開けられない作りだ。


「ヒナ、少しそこの兵士とアメノトリフネ殿と外にいてくれないか?」


3人を外に出す。

俺は自分の手を鉄剣で切るとその傷がふさがる前に鉄格子を掴む。

煙を立てて鉄格子は溶けていく。

不老不死者の血肉の力というか、何ものも溶かす毒だ。

だから兵士を見張りに立てて、アマテラスが鉄格子に近づこうとすると棒で突いて遠ざけるのだ。


「あなたは同じ転生者!?」


「それは後程、今は逃げましょう。それと私のことはただの人間、オオキミと名のっていますから、それでお願いします。」


ヒナは兵士を縛り上げていた。

俺はアマテラスを抱えながら山の急斜面を登る。

追っ手はまだ動き始めていないようだ。

「大丈夫よ、さっき見張りが交代したばかりだから3時間は大丈夫なはず。」

時間って何千年ぶりの単語だろう。


必死に逃げてとりあえず、もう大丈夫だろうというところまで逃げてきた。

もちろん、大規模な捜索を行われればまずい状況だが、大半の天孫たちは本拠地を奴国ナコク、ヤマト(八山戸)に移している。知らせがいって、指示が来るまでには相当な時間がかかるだろう。


「アメノトリフネありがとう。お前が来なかったら大変なことになるところだったわよ。それとオオキミ様もわざわざこんな辺境まで助けに来てくださいりありがとうございます。それに・・・」


「この者は私の弟でヒナと申します。槍の使い手です。」


「ヒナ様もありがとう。」


「ところでアメノトリフネ。国譲りはうまくいったかしら?」


「はい、こちらのオオキミ様のとりはからいでうまく話がまとまりました。」


「ちゃんと宮殿を建てるまでいったかしら?」


「やはりご存じなのですね。それもオオキミ様のお力で天を見上げるような神殿の建設が始まっております。」


「やっぱりね。」


「アメノトリフネあなたには、これからとても大事な仕事をしてもらいます。本当に申し訳ないから、嫌ならやらなくてもいいわ。私のそばにいてくれてもいいし。」


「アメノトリフネ様に何をやらせようというのですか?」


「その前に、オオキミ様と少し二人だけでお話がしたいの。いいかしら?」


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