146.建設開始
古代の出雲のお社は高さ40メートル。三本の柱を金輪で継いでいく方法で建てる。上古のお社はさらに高さが100メートルあったとかいわれるが、さすがにそこまでは難しいだろう。
まあ、40メートルは可能かな。できれば50から60メートルの高さを出したいが・・・。
一度、深緑の王国に戻り、各集落の王を招集して設計用の模型を作る。
王達はそれぞれの集落を建てた総監督たちだから、技術的にできること、できないことがはっきりわかる。
金輪の概要は話してある。強力な素材でそう簡単に引きちぎられることはない。
理論上は100メートルも不可能ではないが、立てるための足場がそれだけの高さになって材料の重みがかかると不可能だという。
やはり50~60メートルが限度だろうと結論付けた。
基本的にモニュメントが主な目的で、あくまでも神殿であり、寝殿ではないので、居住性よりも見た目重視にする。
6本の柱を6角形に配して、6本の柱1本ずつは大木の丸太3本を金輪で囲み、それを3本の丸太の楔を打ち付け締め上げる。同時に楔の部分に梁をかけて、僅かに内側に傾けてある柱を支えていく。梁の重さがより金輪を締め上げるので頑丈に作ることができる。
内側に傾けることで、真下に立った時により高く聳え立つように見える。
傾きも6角形の対角になる2つだけを傾きを変えて最上部は長方形に近くなるようにして、そこを神殿とする。
立地は裏手に山があること、地盤が岩が多く安定していることなどを条件に建設する。
足場は山側から組んでいき、材料も山の上から運び込むので、山の上に材料の集積場を作る。
塔が完成したら、山側の足場を解体しながら、正面側に長大なスロープを作る。
材料はすでにこの冬から切り出しがはじまった。
葦原中国各地から大木が集められるという。
その対価も天孫側から出る。
俺たちが得られるのは、専門家の派遣代、設計、施工管理代として、鉄製鏃、槍先、鉾など数百個と、青銅器を作る技術と鉄の製鉄技術だけだ。
少ないように思えるが、利益は直接の対価以外からも吸い上げている。
建設にかかる費用というか対価の交易品のほとんどは材料に費やされる。
葦原中国の山間集落は木材切り出しで、好景気だ。
おかげで、こちらの交易品の毛皮がよく売れる。
アラエミシも好景気だ。
今年はまだ建設には入らないが、金輪の作成や製材がはじまるので、半分の集落から1、2名ずつ、王本人か後継の若者などが出て葦原中国(出雲)へ向かう。1年交代で残り半分の集落から人が出る。鉄や銅の技術も学ぶため、各集落は率先して人を出した。
彼らには先だって鉄製の釘や金具を大量に作らせて送らせた。
集落に残る者で造船をはじめた。
大型の和船を作る試みだ。
この時代から巨大プロジェクトは景気浮揚の一番の効果がある政策だ。