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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
141/182

141.要求

大国主神の話ではアマテラスからの国譲りの要求はもう20年近く前から行われてきたらしい。当初はまったくわからない相手で、しかも、伝えに来た使者はこちらに帰順することを望んだので、返事らしい返事はしなかったという。

ところが、数年前に帰順した者が何者かに殺されると、急に高圧的な態度で、交易団を装った兵士を派遣してきたという。


帰順した者の話と、最近伝わった銅剣の用途を聞いて戦争を意識した大国主神は銅剣の増産を指示して貯えるようになったが、戦争というものをしたことがないので軍をどう訓練していいものかもわからないという。正直、素人の軍には剣より槍のほうがよかったと思い始めたころには手遅れの状態で、周辺諸国に天孫軍が交易団を装い逗留するようになったという。

天孫軍は直接の統治には口を出さないが、交易相手や交易品目に口出しして、仲介料として交易品の一部を取り上げて、交易シーズンが終わると本国に戻るという。

それを繰り返しているうちに、周辺から包囲されて、国譲りの最後通牒を突き付けられた形になったという。

周辺諸国の中には、多少の交易品を取られるくらいで、最新の武器や技術が手に入るので天孫側についた者も多いという。明日からの会議で白い服を着たものが天津神ともよばれる天孫側、黒い服が国神側になるという。


「大国主神さま、天孫側への要求ですが、巨大宮殿を欲してはいかがでしょうか?」


「それは、タケミナカタが言うところのオオキミ様の神殿のような宮殿ということでしょうか?」


「うちのは神殿ではなくて、ただの集落ですが、そうですね。でも、高さだけはうちのより大きくしましょう。」


「オオキミ様、なぜ宮殿なのですか?」

タケミナカタが尋ねる。


「相手の国力をそぐ意味もあります。相手が無理にこの周辺の交易品の召し上げ量を増やせば離反してこちらにつく国神が増えるでしょうし。そうさせないためには本国から物品を放出して建設材料や人々へ労働報酬を出す必要があります。さらに、我々のところへ来た使者の様子から、巨大な特に高さを出す建築物を建てる技術はまだ無いように思えます。とはいっても、彼らは自分たちが一番すぐれていると思わせることで交易品を召し上げているのですから、できないとは言わないでしょう。」


「なるほど、しかし、兄のヤエノコトシロも弟のタケミナカタも激しく抵抗してしまった。そのうえで、その要求は通るだろうか?それに彼らは強力な交易相手が海の向こうにいるらしいのです。」


「アマテラスがまだ生きていれば、その要求は通るでしょう。死んでいたとしても、国譲りの顛末を知らされていれば間違いなく、要求通りになります。」

正史通りに歴史を進めたければ、この要求は通るはずだ。

アマテラスがまだ幽閉されていて、起死回生のチャンスを狙うにしても、歴史通りに進んだほうがいいだろう。

それに、この要求をして返事までの時間でアマテラスが生きているか、死んでしまっているかはの判断もつきやすくなる。すぐに返事が来れば、伺いをたてる必要がないか、すでに死んでいるかだ。


問題は海の向こうの交易相手だ。

ただ、中国の史書に日本関連が登場するのはまだ少し先の事。かかわりがあるとすれば朝鮮半島だが、まだ気にしなくてもいいと思う。


「ところで鉄器はもう生産されているのですか?」

一番気になる点だ。


「いや、天孫軍の一部が遠い異国から得たものらしい。これが厄介でこちらに帰順した者たちの話では、タカマガハラ本国にすら報告しておらず、途中で交易して天孫の交易団も本国へはほとんど帰っていないというのだ。」

確かに九州から出雲では遠すぎる。アマテラスは九州の南部に幽閉して、自分たちの本拠地はもう少し北に構えているのかもしれない。特に大陸との交易が有利な北九州辺りや、ここで軍を駐留させていることからすでに畿内に入り込んでいる可能性もある。


確かタカマガハラのあるとされた日向は鉄器や青銅器の伝達が遅い。だから実際は別のところという説もあるが、天孫たちが故意に途中の北九州辺りで、こちちらで得た交易品で取引を行い、本国へはまったく報告していないということも十分考えられる。


それに加えて、残念だがまだ製鉄技術は手に入らないか。


「青銅のほうはどうでしょう?」


「青銅の材料も交易で手に入れます。ただ、ここ数年天孫側についた者でなければ手に入れることができなくなってきています。」


やはり材料はまだ輸入か。

それより、まんまと青銅器に魅せられて向こうの作戦に嵌められたという感じだろう。戦争を知らないところに武器見せて、不安を煽り、売り込む。もっと材料の銅鉱石を買わせて使う者のいない銅剣を生産させる。


たぶんそういった国や交易の運営知識もアマテラスが自分の息子や孫たちに教えてしまったのかもしれない。


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