139.使者来訪 II
次に葦原中国の使者が陸側からやってきた。
手前の集落から知らせが入るとすぐに、丁重に案内させた。
使者は先日助けたタケミナカタと配下の者たちだった。
玉座ではなく4層南にある孫のイキノキミ(岩城の王)のスペースで話を聞く。
あのあと、タケミナカタはタケミカヅチに何度か挑んだがことごとく負けたそうだ。
もはや国譲りしか道はないが、何としても集落民、できれば神々たる国主たちも無事に済ませたいという。今は大国主神が神々を集めて話し合い国譲りをするからと時間稼ぎをしている状態だという。
「先日、天孫側の使者が参りました。大国主神に国譲りするよう説得するためにアシワラノナカツクニへ参れと言ってきました。」
「やはり来ましたか。彼らとしては天孫側の言い分を認めさせようということでしょう。」
「おそらく、天孫側につくか、独立を画策するか、神々を篩い分けするために一堂に集めるのだろうと思います。私の楽観的な予想ですが、それほど高圧的な宣撫はないかと思います。ただ、既存の神々を故郷から別の地域に動かして力を削ぐことはするかと思います。なぜなら、天孫側は仲間をお互いに信頼していないからです。なんせ裏切りで権力を得た者たちですし、実際、今までの使者も寝返っているわけですから。」
「一堂に集められて一気に殺される心配はないでしょうか?」
「それはないでしょう。そんな事をすれば抵抗勢力が勢いづくだけですから。」
「なるほど、では私も大丈夫なのでしょうか?」
「自らかなり遠くへ行くことを約束されれば大丈夫でしょう。先日お話した通り、シナノノクニのスワノウミというところから出ないと約束されれば大丈夫かと思います。」
「父大国主神はどうでしょう?」
「それに関しては、ある程度要求は通るでしょう。向こうは国を得たという名をとりたいわけですから、実益はこちらが少しでもとれるように要求をしっかり持って交渉しましょう。」
「では、来ていただけるのですね」
「はい、大国主神様にはお会いしたいと思っていましたので。」
「父も喜びます。」
タケミナカタには集落の建物を案内した。
これはまさしく神殿だと感嘆して、これをアシワラアカツクニに作りたいと言っている。