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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
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138.使者来訪 I

結局、ヤエ様には巫女の地位が認められたが、ここでは長らく巫女イコール神嫁という考えが定着してしまったので、なし崩し的に俺の生活スペースの4層北側のエリアが割り振られた。俺の寝室のあるエリアだ。下の三層は孫の家族が使っている。これだけの巨大建造物も今はすでに手狭感がある。


俺からしたら大国主神、神話に出てくる神様の愛娘にいきなり手を出すわけにもいかない。それに親のためとか思っている女性には手を出さないという俺のポリシーにも反する。なので、布で間仕切りを作ったが、薄布一枚先にけっこうタイプの女性が寝ている状況は、睡眠不足に陥りがちだ。

そう、俺は少しボーイッシュな感じの女性も好みだったりする。

最初の神嫁の3人のうちアシリクルのイメージに近い女性だった。

神とはいえたまには強い女性に甘えたいのだ。


港のほうの交易人と街道の最初の集落には、使者の特徴を知らせてある。

まずは手前の集落で取次が必要ということで足止めする。

使者の人となりを確かめてからこちらに案内することにした。


最初に来た使者は天孫側の軍の兵士たちで、舟でやってきて港側の集落で対応中だ。

使者というよりは、到着するなり集落民を恫喝し威圧的な態度でいるらしい。


俺はこの時のために建物の列柱室の中央の広場に熊の皮で作った玉座を用意した。長老たちも様々な獣の皮を纏い、長めの黒曜石の槍を片手に、列柱室に並ばせた。

俺たちが交易でばらまいた噂。アラエミシの格好だ。


使者たちの対応はがらりと変わって、神妙にしている。

「この地を統べられるオオキミ様の御前にて、アマテラス様のお言葉をお伝えいたします。」


使者はこの建物の大きさと内部の簡素ながら壮麗な造りに、驚きを隠せないようすだ。しかし、やはり淡々と国譲りへの協力要請を、天の最高神の名前で迫ってきた。


「使者殿、ご苦労であった。当方も巫女を通じて最高神アラハバキ様に伺いをたてるので、そのままお待ちください。」


俺は玉座から降りると後ろにさがった。

暫くして姿を見せると。

「当方の巫女が伺いをたてたところ最高神は久々にアマテラス殿と酒を酌み交わしたいそうです。アシワラノナカツクニに参ればお会いできるのかと聞いています。」


使者はどよめいている。

「いえ、アマテラス様はタカマガハラにて、アシワラノナカツクニには天孫の方々が参っております。」


再び俺は後ろにさがって暫くしてから出ていく。

「では、こちらのアラハバキ様の天孫にも同じように武装してアシワラノナカツクニに行かせればよいのかと仰せです。」


使者は先ほどよりも動揺している。


「その必要はありません。私どもは国譲りの交渉でアシワラノナカツクニに行っております。けっして武装などしておりません。」


確かに交易団に調べさせると表向きは平穏で出入りも厳しくない。

ただ、西方の交易団の中に明らかに規模も大きすぎるわりに、取り扱い品目が少なく、武器を携帯するものたちが多いという情報を仕入れてある。


「では、なぜそなたたちは武装している?」


「それは、アラエミシの地は獣が多く危険だと教えを受けたからです。」


「槍ではなく、その剣で熊と対峙できると?」

使者は黙っている。

再び俺は後ろにさがって、こんどはしばらく表に出なかった。

30分以上使者を放置してから出て行った。

「我らが神は全てお見通しだ。アマテラス殿とは同郷だと言っておられる。しかも、とても悲しんでおられたがどういうことだ?」


使者はかなり慌てている。

「我らが最高神は、同じようになることを恐れて、自らお隠れになりたいとも言っている。どういうことか!!」

さらに厳しい口調で使者を問い詰める。


「平和的な国譲りには、我らも賛同だが、本当にそうか確かめてこいと仰せだ。配下のものたちで、大国主神のところへ説得に行くが、同時にそなたら天孫の側も調べてこいとの仰せだ。」

「それにこれはこの国の長として、またアラハバキ様の配下としての意見だが、この北の地からわざわざ呼ばれるのであるから相応の対価がなければ協力はできない。」


使者はタケミカヅチ様にお伝えするとだけ言って逃げるように帰っていった。

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