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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
135/182

135.銅剣の招待状

正直、俺は話を聞いた後関わり合いになるのを避けようとした。

変に関わると歴史の改変になる。

仮にここが異世界であったとしても、歴史が日本史や伝説の通り進むのなら無理に介入しないほうがいいのではと最近は考えるようになった。

下手に介入して俺が全く知らない歴史になるより、多少知っている歴史通り進んでくれれば、むしろ世渡りが有利になると考えたのだ。

これから先の時代は特にそうだ。

純真無垢な縄文人の時代はもう少しで終わりを告げる。

慎重に時代を読んでいかなければならない。


ここは大人しく国譲りの方向へ向かって欲しい。


「オオキミ様の国はここより遠いのですか?」


「はい、ここから出雲までの倍以上の距離がります。」

遠いことを強調しておけば、なんとか関わらずに済むだろう。


「それでは伝説のアラエミシ族の住まう場所ですか?」


アラエミシは俺たちの住んでいる東北北部と北海道の自給自足系集落の人々を指す言葉だ。熊を狩り、その毛皮を俺たち交易系集落の交易団が交換して、南方と取引する。その時に多少話を盛って交渉しているが、勇猛果敢な彼らをアラエミシという名前で交易団が勝手に紹介しているのだ。

そこに期待されるとまずい。


「ええ、まあ、アラエミシはいますが、数が少ないうえに、彼らは自給自足で狩りをする民族でして、外には出たがらないのです。」


嘘は言わないが、関りにならないよう情報を与える。


「何とかなりませぬか?」


「難しいでしょうね。やはり、ここは交渉しか残されていないと思いますよ。敵の中にもこちら側についてくれるものもいるかもしれませんし。これから先、もっといろいろなところで抵抗勢力も、また逆に向こうに寝返るものも出てくるでしょう。今は敵の目を逸らして、大国主神様やあなた様が生き残ることを優先されたほうが良いかと思います。」


「その交渉もこちらを有利に進めたい。それにもできるだけ多くの国主の神々に呼びかけをしたいのだ。」


「なるほど、そういうことでしたら協力はできると思います。ただ、私どもも、交易のほか狩猟・採集など重要なものがありますので、時期を考えていただければなんとかできるでしょう。」


国譲りの時、出雲に集まった神々、国主は殺されたという伝承はない。

行っても大丈夫だろう。俺一人なら大量虐殺があっても抜け出すことも可能だろうし。


とりあえず、タケミナカタが生き残る術として、彼自身の助命嘆願が叶わないときは、東に逃げて信濃国を奥に進むとスワノウミ(諏訪湖)があるところまで行って、再度交渉すると良い結果が得られるだろうと予言しておいた。

後に諏訪の神様になるかもしれない方だから今死なれては困る。


彼からは銅剣を貰った。それが国主である神々の集いの招待を受けたものということになるらしい。

国譲り会議の銅剣の招待状だ。


期日は改めて使者が向かうと言われて、俺は正確な集落の場所と交易団の名前、氏族の外交・交易担当の名前を教えると。彼は部下に抱えられながら去っていった。


さて、どうしたものかな?

旅はこれからだったのに、余計な、というか日本を揺るがす大事件の一端に触れてしまった。


考え事をしながら、昨晩の片づけをしているとヤエノコトシロが藪の中から現れた。

「オオキミ様、申し訳ありません。大変なことに巻き込んでしまって」


「いや、別に大変だとは思ってない。ただ、残してきた者たちに知らせておかないといけないので、旅はやめて戻るしかないが・・・

コトシロ様はどうされるのですか?」


「私は、もう行くあてもないので、さらに北へ行って隠れ住もうと思っています。」


「では、私どもの集落へ来てはいかがですか?歓迎いたしますよ」


「よろしいのでしょうか?タケミナカタに交渉の場に赴くようにとまで約束させられたうえに、私まで行ってしまってはご迷惑をお掛けいてしまいます。」


「北へお越しになられるのでしたら、どこへ行っても私の家族のようなものです。それに交渉事をするにしても相手のことも、大国主神様のこともわからなければ有利に話を進めることはできません。できれば、そういったこともお教え願いたいのです。」


「ありがとうございます。そう言ったことでしたら喜んで協力いたします。」


ヤエノコトシロと一緒に深緑の王国へ戻ることになった。

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