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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第2章 動き出す神々 Action of Gods 木の国
128/182

128.津波

深緑の王国は集落集合体の巨大氏族だ。

集落といっても竪穴式住居ではなくて、巨大木造建築を作りその中に住んでいる。


俺が、ここを異世界だと判断するよりどころでもある場所だ。

すでに何度か訪れている。

何百本もの巨木を組んで巨大な建造物を作り、その中に数十家族が共同生活をしている。

そんな遺跡はいまだ発掘されていないからだ。


最初の危機が訪れたのは俺が深緑の王国に到着して、最初の巫女、神嫁を選ぶ時だった。


かなり大きな揺れだった。巨大木造建築がギシギシと大きな音を立てて軋む。

しかし、倒壊することはなかった。

問題はその後だった。


津波が心配されたので建物の屋上に出て、周りの地形を確認する。

この建物は高台にあるようなので大丈夫そうだ。

ただ、他の巨大建築物は高台の下にあるものが多い。

先ほどの揺れには耐えきったようだが、問題は津波が発生するか?そして、ここまで到達するか?だ。


海からの距離はあるが、岩木川の河口の広大な沼地に面した平原の端にあるので、津波が川を遡ると危険だ。

とりあえず、走ってすぐに行ける範囲の建物には避難するように呼びかけをしてもらった。


30分ほどで、遠くに黒い線が見えはじめた。

第1波の津波が到達した。

巨大建築物の多くは第1波では流されて倒壊することはなかったが、第1波の引く前に第2波が到達。水位が深くなったところで、柱の巨木が抜けたり、流されて倒壊がはじまった。


俺のいる高台のすぐ下の建物は住民の多くはこちらに避難したが、建物の長、この地ではキミと呼ばれる人は屋上に残っていた。建物と命を共にするつもりなのか。


神嫁の選定で来ていた娘の1人がそれを見て

「お母さーん、お父さーん!!」と叫んでいる。

他の選定で来た娘たちは怯えて蹲っている。

その娘は今にも建物から飛び降りそうなほど必死で、俺の世話役・後見人のイ・キ・ノ・キミ(岩城の王)が必死に抑えている。

イキノキミの話では、ミ・ヨ・ノ・キミ(水淀の王)の娘レラタサ(風に向かう)だという。


俺は建物から飛び降りて丘を一気に滑り降りて、津波の濁流に飛び込んだ。

巨木が流れてきて、押し潰したりするが関係ない。どうせ、不老不死だ。

完全に抑え込まれたらどうしようもないかもしれないが、その時は何も考えなかった。


建物までの距離は大したことなかった。2,30メートルといったところか。

たどり着いて、倒壊のはじまった建物の内部を駆け上がる。火は消されていたので、明り取りの僅かな光が頼りだ。

幸い、コンクリート建物と違って、巨木の建造物で蔦や葡萄鶴蔓で組んでいるので倒壊はゆっくりだし、水に浮く。

問題は流れる巨木に押しつぶされたり、下敷きにならないようにすることだ。

やっと屋上に出られた。


「はやくこちらへ!建物はまた建てれば済みますが、あなたが死んでは取り返しがつきません。家族はみなそう思うでしょう。考えている暇はありません。生きていれば、あとはどうにかなりますから。」


「あなた、その方がおっしゃる通りです。まして命がけで来てくださったのですからまいりましょう。」

女性が男の手をとる。

俺も半ば強引に男のもう片方の手を引いて下の階に下りる。


ちょうど外に巨木の柱が流れ着いて柱に引っかかっているので、その上に二人を乗せる。

倒壊した建物から流れ着いた蔦やロープが絡みついて引っかかっている。

俺の自慢の黒曜石のナイフで切っていくが、ロープはいいが葡萄蔓はなかなか切ることができない。そうこうしている間に、次々他の建物が倒壊してバラバラになった巨木が勢いよく流れついてぶつかり始めた。

濁った水中に潜り、なんとか引っかかっていた葡萄蔓を切り離すことができた。

俺が巨木によじ登ろうとした瞬間、背中に別の建物から流れてきた巨木の柱が激突した。

普通なら即死の衝撃だ。

痛みと衝撃はその通り感じる。体は何ともないのだが・・・。

これは1000年以上の間何度か経験したので、わかってはいるが、辛い痛みだ。要は死ぬくらいの痛みだが死ねないのだ。


俺が挟まって衝撃を吸収したので、二人は振り落とされずに済んだ。

そのまま、俺は丸太を建物から外してから上に乗り、流れてきた得頃な流木を竿の代わりにして流れに乗りながら岸に着けた。


なんとかこの二人は助けることができた。

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