126.神々より前で
第1章 神々より前の時代 Before Gods
がこれで終わりです。
次から第2章のはじまりです。
第2章から一番書きたかったお話になるので、少しじっくりゆっくり書きます。
急ぎ頭の中を掻き出すように書いたので、誤字脱字、表現に至らないところが多かったのですが、次章からはいただいたご意見をもとにじっくり書きますのでお楽しみに。
ピリカノ・ウイマムを出発し、ピパイロ首長のいた集落を訪問。
あの時のように温泉に入り、峠を越えてユペツの集落へ戻る。
その途中、再び熊の親子に出会った。
なぜか、昔会った熊、現世の頃に会った熊、そして今目の前にいる熊、同じに見える。同じように子熊を連れて。そこだけ時が無限にループしているように。ふと、現世に戻れるんじゃないかと思ったが、やはりここは現世ではない過去かパラレルワールドかだ。もう異世界じゃないかという考えはほとんどない。
時々、ここは異世界であって欲しいと甘えたくなる時はある。
でも、魔法のある異世界のようにはできないもどかしさ。
半ば諦めにも似た感じで異世界ではないと言い聞かせている自分がいる。
ユペツの集落で留守中の集落のことを聞く。
何も問題は起きていない。
あまり長居せずに、南のモシリの塔の集落に戻る。
塔の集落に戻ると、問題は起きていなかったが、新しい交易品などの品定めの作業があった。こちらで作る、漆製品や布などが、俺が来た頃より格段に品質が上がった。
交易で入ってくるものについても今までより大きなものや技巧に凝ったものが入ってくるようになった。
板綴舟がかなり普及してきたのだ。
ただ、これから問題になりそうな事案は、工芸品は質が上がったぶん工程が増えたので食料を配給制度にして専門職にしなければ供給が間に合わないということだ。
儲けは今のままで十分なのと、貨幣制度が当然ないので、儲けをとっておく方法がない。ヒスイや琥珀など腐らない高交換率のものでとっておく方法もあるが、災害が起きるとどこもヒスイや琥珀は欲しがらない。集落の安定を考えるなら、あまり専門化するのはよくない。同じ氏族間とはいえ、食料生産集落と工芸生産集落に分けるのも、時代が下れば疎遠になってどうなるかわからない。自然災害や文化の変遷で食糧生産も交易もどうなるかわからないからだ。
ただ、確実に時代が変わってきている。
尖底土器が多かったのが、円筒土器に変わろうとしてる。尖底土器はサイズが多少違っても竃で使える利点がある。なので、家族ごとに作ることも可能だった。円筒土器はサイズをそろえないと竃では使えない。ただ、囲炉裏や炉端で煮炊きする場合の安定性がとてもいい。置いておくのもわざわざ三角に穴を掘らなくてもいい。その代わり専業の職人が作るか、集落共同作業で作る必要がある。
これも集落のリスク管理上若干問題だ。
食料自給率は今まで通り100%を維持したい。
そこら辺の指示や交易品の品定めが終わってすぐに、今度は南へ旅に出ることにした。
北のモシリ(北海道)の旅で俺なりの踏ん切りはついた。
今度の旅は少長くなるかもしれないが、戻ったら巫女を選ぶと宣言して集落をあとにした。
南の旅は同じ転生者がいるのかを確かめたくて、できる限り南、そして、より多くの集落を巡った。どの集落も歓迎の温度差はあったが、身の危険を感じるようなことはなかった。あだ、西のほうでイノシシに追いかけられたときはこわかった。あの突撃は熊よりむしろよけることができないぶん厄介だった。
もっとも西で現世の出雲まで行ってみた。
もちろん青銅器はまだないし、巨大な神殿もない。
出雲でさらに南の情報も仕入れるが、これはと思う情報はなかった。
そして結論からいうと転生者はいなかった。
南のほうもやはり出会う出来事は縄文時代を思わせていたが、まだ神の胎動すら感じられない世界だった。
神々の神話ですら生まれていなかった。
カンチュマリがミコトという神が居ると言っていたが、単純に男の巫女というか男で神の依り代になる者をミコトといっているにすぎなかったが、その中には権力を持ち始めてきた者がいるのは確かだったが。
神々より先の時代。
Before Gods
神々が生まれるまでの間、何をすればよいのだろう。
設定集のほうに第1章の登場人物をまとめました。