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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 旅路
123/182

123.新たな旅へ

レブン・ノンノが亡くなって暫く経ったある日、ひとりになってしまった俺は長老たちと、その見習いたちを大堂に集めた。


長老体制もかなり充実した。

文字はカンチュマリの言葉や神謡の知識から、いまだ作りたいとは思えない。

ただ、数字や物品の受け渡しに関する品目、量目などは集落内で共通してわかるようにした。土偶を改良した粘土板だ。在庫や生産管理にも使われている。


交易系は以前の品目ごとに分担していた交易団から、北方担当、南方担当、地域担当の3部署に、食糧生産は、狩猟・採集と加工・保管の2部署、工芸は木、石、土の3部署に、呪術師衆1部署、海洋船舶1部署の全10部署制にした。集落も3か所に分散した。北のモシリはユペツ(湯の川)のほか新たにシリウチに集落を拓いた。

集落民は5曜のうち2公3民で各部署に従事する。交易団など長期従事者は、2か月間で2公、3民になるように休暇を貰うか、3民のうち1民ぶんの日数を1日の平均採集・狩猟の収穫量で交換できるようにした。


「皆に集まってもらったのは、俺はこれから旅に出る。少し長い旅だ。わかってもらいたいのは、この塔の集落、物見の氏族を見限るということではない。俺は神としてもっと広いこの大地のことを知らなくてはならない。1年で戻るかもしれないし、もしかしたら数年戻らないかもしれない。ただ、何かあったときは必ず戻る。それは約束するし、極力交易団を通じて俺の動向を伝えるし、この集落の情報も耳に入れるようにする。」


地域交易担当の長老「何か重要な問題が起きてすぐに決めなければならないときはどのようにしましょう。今は巫女様たちもおりませんし。」


「その時は、今までのように夜を徹して討論して、それでも決まらなければ多数決で決めるようにしてくれ。ただ、異なる考えがあることは生き残るうえで大事なことだ。違う考えを尊重するように。そして、俺たちは仲間だ。いがみ合うことは絶対にするな。俺はそうなってしまうことを悲しく思うし、そこまでのことはまだ起こらないと信じてはいるが・・・。」


他にもいろいろ指示をして万全を期して旅に出ることにした。

まずは集落が順調なうちに北だな。

北のモシリに渡ることにする。

懐かしいユペツ(湯の川)の集落にも行ってみたい。

カンナアリキの子供や孫たちは元気だろうか?

トカプチのアンヂ・アンパラヤやタタル、シカルンテの子どもや孫はいるのだろうか?

コロポックルたちはもう皆に馴染んだだろうか?

アシリクルが越えたカムイミンタラ(熊の遊ぶ庭)は大雪山だろう。

そこにも行ってみたい。

モシリの果て、シリエトク(知床)も行ってみよう。


俺は北へ向かう交易団の舟に乗り込み海峡を渡った。

なんとなく、大勢に見守られている気がして不安はない。

舟は順風満帆、気楽な一人旅がはじまった。


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