表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 旅路
121/182

121.別れ

俺に孫ができた。俺が来た頃の長老たちも全員古老だ。普通の集落ならもう寿命で亡くなってもおかしくない年齢だが、豊かなこの集落では比較的長生きできる。


年月の過ぎ去るのが異様に早く感じる。

それでも、転生して最初の縁に強く惹かれているのか、なかなか新しい縁を持ちたいという気持ちになれない。


カンチュマリが、新しい巫女を入れる提案をしたが却下した。

俺にとってはアシリクルはまだ巫女のままだ。

正直、カンチュマリもレブンノンノもアシリクルが去ったときの気持ちも多少持ち合わせているのだろう。一緒に寝るのも遠慮がちになってきた。

それでも関係ないと俺は二人に甘え続けた。


アシリクルは最初うちは1年に1回集落に戻ってきて、珍しい産物や工芸品を持って、遠くの地の話をしてくれたが、それが1年半、2年と間が伸びて、やがて現れなくなった。最後は海峡を渡ったというが、その行方は知れなかった。


そのうち、俺が転生した時にいた長老たちが一人、また一人と亡くなった。


カンチュマリも寝込むことが多くなった。

レブン・ノンノと二人で看病する。


奇しくも俺が転生した夏至の日の夜だった。

夏至の祭祀は息子のチュプ・カムイに任せていたが、祭祀が終わってすぐに駆け付けた。


「チュプカムイ、これを、大切に子孫に伝えていきなさい。」

そういって金の指輪を嵌めた手を差し出す。

もう自分で指輪を外すこともできない。

チュプ・カムイは躊躇したが、俺が頷くとカンチュマリの指から指輪を外すと、自分の指に嵌めた。

それを見せると

「立派に母上、父上のように子子孫孫集落に尽くします。」

カンチュマリはうなずくだけだった。


最後に俺の手を握って。

「きっとまたみんなで会えますから、それまでほんの少しのお別れです。ユウダイ様、この地をよろしくお願いいします。」

そう言って黄泉に旅立った。

あとの祭祀は記憶に残っていない。

ただ、茫然と立ち尽くすしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ