112.再開の宴
十和田湖の噴火で移住を余儀なくされて、北のモシリ(北海道)に渡り6度の冬を過ごしてやっと南のモシリ(本州青森県)に戻ってきた。
俺が転生して7回の冬を過ごしたことになる。
巫女のミナ・トマリや呪術師のカント・ヨミ・クルが出迎えに来てくれた。
ミナ・トマリはまだ出会った頃は少女の面影が残っていたが、今はすっかり魅力的な女性になっていた。
さっそく、集落に向かう。津波や洪水対策て集落は少し内陸に入った高台にある。
津軽半島の交易拠点集落はもともとは交易用で住民が少ない集落だったが、噴火災害のあとは塔の集落の一部住民をここに移住させて、生産性を上げていたので今は普通の集落として機能している。
ここでも事前に残る者と塔の集落に戻る者との意向調査をしてある。戻る者たちはすでに、荷物を塔の集落に運び、受け入れの準備もしてある。北のモシリから塔の集落に戻る人たちの手伝いのために戻ってきている。
すぐに宴が催された。
みなで再会を喜んでいる。
「カント・ヨミ・クル、楽しんでいる最中悪いんだが、明日以降の天候と風向きは大凡わかるか?」
「はい、明日は午前中北西の風が少し強く吹きます。白波が立つほどではないと思いますが、気温は少し低めです。」
「では、明日は俺とカント・ヨミ・クルは舟で塔の集落に向かうことにする。」
「はい、ではアレを試すのですね。知らせがあって、こちらで試作しておいてあります。取り付けもすぐにできるようにしてあります。でも、今日はまずは皆様の歓迎の宴をお楽しみください。」
確かに野暮な話をしてしまった。
こちらの宴は久々だ。
貝と木の実中心で肉類は少ないが懐かしく感じる味だった。
ただ、俺としては明日の実験はかなり楽しみにしている。