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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 旅路
111/182

111.帰郷の海峡

息子のチュプカムイが1歳になった。昨年の紅葉のさなかに生まれたので、10月生まれだろう。

ということは青森に戻るのは4月の予定だから1歳とちょうど半年ぐらいか。

慎重に移動すればなんとか大丈夫だろう。

巫女たちとこちらに置いていくことも考えたが、生活上、やはり一緒にいないと成り立たないことが多々あるので連れて行くしかない。

冬場にしっかりと栄養を取って、全員が無事向こうに戻らなければいけない。


集落に残る者もしっかり集落運営を任せられる状態になっている。

北も南も交易は順調だ。

あとは青森の塔の集落の狩猟・採集がどの程度回復しているかだ。

情報ではかなりぎりぎりだが、なんとかできるレベルまで回復してきているとのことだ。


春分の祭祀はこちらは完全に手を引いて、来賓気分で参加する。

まもなく南のモシリへ戻るので、カンナアリキ首長が春分の祭祀に引き続き、お別れの宴を開いてくれた。

レブン・ノンノには残るかと聞いたが、一緒に南のモシリへ戻るという。

自分の子供ではなくても、もうお母さんのつもりでチュプカムイの面倒を見てくれている。


宴が済んだ翌日から、荷物を海峡を渡る物見の氏族の交易拠点集落に運び込む。

俺と息子のチュプカムイと巫女たち3人もほぼ荷物と同時に出発する。

乳飲み子を連れての旅だから、ゆっくりと無理しないで移動する。通常より遅くなるのを見越しての出発だ。


途中集落に連絡済みで、泊まりはテントや倉庫の床下ではなくて、全て住居や集会所を貸してもらった。

現世の北海道知内町あたりから舟を出す。


この時のために技術チート?

いやチートとまではいかないな。

神謡の知識の中にもあったことなので、すでに過去に同様の技術が存在している。

そう、現代知識のほうが負けてしまった感じだ。


今までの丸木舟そのままじゃなくて、波除け板を付けて、荒波にも負けない舟を作った。最初、釘も鋸もないので無理かと思っていたが、神謡の知識も使って、作り上げておいた。

すでに昨年から試験航海もして安全に海峡を渡れることは実証済みだ。

下手に釘を使うより丈夫かもしれない。

丸木舟に釘や金具で波除け板を固定するのではなくて、紐で綴る要領で船形に締め上げて作るのだ。板綴舟というものらしい。


この舟は神と巫女の専用船として、目張りにアスファルト防水にさらに外側に贅沢に漆塗りを施した。なので、普通の舟より軽い力で進むことができる。

とはいっても今回の戻りの舟に使ったあとは交易船になる。他の舟も早急にこの舟に切り替えていく。


そういえば、モデルが板綴舟とされる土製品が俺たちの居た集落の近くから発掘されている。もし、この舟が出土しても大きく歴史が書き換わることはないだろう。


航海は順調だ。ただ、往路と違い復路は複雑な海流を使い蛇行するような航路を描くので、時間がかかる。そして到着は津軽半島先端部ではなくて、陸奥湾を南にさがった交易拠点集落の近くになる。その分、距離も長くなる。


事前にこの時期に戻ると伝えてあるので、海側の高台では、連日大きな火が焚かれている。時間がかかり夜になった場合の対策だ。これは、物見の氏族の本来の役割で、連日連夜海岸線で火を焚いていてくれているから、かなり安心だ。


予想通り夜の到着だが、明るいうちから津軽半島の岸辺が見ええていて、沿岸を目的地まで南下するだけ。暗くなってすぐに灯火が見えてきて、何事もなく到着できた。


俺としては往路の波よけ板のない丸木舟のほうが波に酔わずにすんだ。波と一体感があったからだろう。だが、復路の波除板付きの舟は波が見えずらいぶんかなり酔った。

チュプカムイだけが波の揺れに喜んで笑っていた。


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