107.やっぱり家がいいようだ
温泉からピリカノ・ウイマムの集落に戻ると、ちょうどトカプチの黒曜石交易団アンヂ・アンパラヤが来ていた。
巫女たち3人を紹介して、3年後の春を目途に南のモシリ(青森)に戻ることを話す。
他にも南方産黒曜石の件も話をした。
より上質のものを供給してくれれば、問題ないし、実際アンヂ・アンパラヤが直接ピリカノ・ウイマムまで来てくれるようになったので、質のほうは以前より格段によくなって競争力は十分ある。
あわせて、北のモシリまで南方産の黒曜石を入れさせないために使う商品。獣の皮、つまり毛皮も途中の集落で交換して持ってきてくれることになった。
それを俺たちの交易団ができるだけ南に持っていけば、途中で黒曜石は交換されて、北まではあまり来ないはずだ。
もちろん、上質の黒曜石は競争力があるので、それも南へ投入してみようと思う。まだ直接南方産の黒曜石は見ていないが、狩猟の腕前からいっても実績はこちらが上のはずだ。
若干、黒曜石の在庫がだぶつくが、南のモシリでもまだ商域として未開発だった岩手県県北、青森の東部をターゲットにしてみようと思う。そちらは俺が戻って本格的にやろうと思う。なんせ俺が転生される前の故郷があるから。
タタルもシカルンテも元気でやっているそうだ。
来年あたりが会える最後になりそうだ。
皆にもよろしく伝えて欲しいと伝言を頼んだ。
帰りはオシロナイヌプリ(北海道駒ケ岳)の東側を通り、ピパイロ首長のいる集落へ向かった。
途中は火山噴火の泥流でレブン・ノンノの父親が命を失った場所があるが、レブン・ノンノが希望して立ち寄って祈りを捧げた。
ピパイロ首長に巫女たちを紹介し、ここでも3年後に俺たちは南のモシリに戻るが、こちらの集落も存続させて、今後も取引を続けてほしいとお願いする。
ピパイロ首長も快諾してくれて、歓迎の宴を開いてくれた。
翌日は早めに温泉に移動して、体を温泉で休ませて泊まり、翌朝早くに峠を越えて集落に戻った。
峠越えで汗をかいたので、ユペツ(湯の川)温泉に4人で入る。
皆口々にやっぱりここの温泉がいいと言っている。
確かに体が冷えないうちに家に帰って寝られるのが一番だ。
これが楽しめるのも長くてあと3年。
2年後に南のモシリ(青森)の状況が良くなっていれば戻らなければならない。
いっそのことここが過去の日本じゃなくて異世界なら、せめてパラレルワールドなら気にしないで浴場施設とか作るんだけどな。
もうあまり気にしないでもいいかな。