104.新人
南のモシリ(青森)の塔の集落の様子も詳しく知ることができた。
徐々に緑が戻ってきているらしい。
とはいっても十分な狩猟・採集が出来る状態ではないとのこと。
ただ、以前より交易が盛んになってきているので、塔の集落のほうに夏季だけ交易人の家族を戻して、交易のサポートと集落の復旧作業をはじめているとのこと。
呪術師のカント・ヨミ・クルの話ではあと2、3年で戻っても、うまくやり繰りすれば集落運営が可能だということだ。
その時点で、俺も向こうに戻ろうかと思うが、獣の皮の交易が好機と思うので、こちらの集落もある程度存続させたい。
改めて集落民に、残る者と帰る者と希望を聞いて、春から集落に入る交易系の新人たちとも、この集落を任せられるようにしなくてはいけない。
イアンパヌ(賢者)女性とニシテレ(頑丈)男性が訪ねてきた。
2人は兄弟だという。
こちらの集落への移住希望者のようでヤイェユカラ(神の歌)の紹介という。
2人に会って話を聞くと。
コロポックルの隠れ里では若いものを里の維持に必要な最低限だけにして、どんどん外の世界に出して同化するようにしているという。
イアンパヌ(賢者)は俺に神謡を授けるときにいた16人の歌い手のうちの1人で一番若い女性だ。近世史(今の時代からみた5000年)の事象を知る歌い手だった。
ニシテレ(頑丈)はイアンパヌの兄で神の歌を継げる要素はなったが、体が丈夫で力持ち。狩猟の腕前も隠れ里で一二を争う腕前にして、ヒグマを戦士の一撃で仕留める勇気も持ち合わせているという。
この二人ならこちらの集落を任せられそうだ。
イアンパヌは現段階で巫女にしてしまうと、一緒に住んで情が移りそうだし、これ以上、お相手を増やすわけにもいかないので、呪術師という肩書にすることにした。俺たちが帰ったあとは巫女にして呪術師、事実上の集落の長としてやってもらおうと思っている。
他に周辺の集落から交易団を目指す若者が10人ばかり集まった。
俺たちが帰る3年後までに集落に馴染んでもらい。
こちらも新しい人員をプラスして新しい交易方針でやってみようと思う。
春から忙しくなりそうだ。