バースデーケーキのろうそく
バースデーケーキのろうそく
ふっと吹くとゆらりと煙が
拍手と祝いの声の隙間を
縫うように明日へと消えていく
ケーキのろうそくが一本一本ふえていくのが嬉しかった
脱皮してさなぎから蝶に変わる時のように
誇らしさが風船のように膨らみ
一歩一歩と大人に近づく未来が見える瞬間
けれどもいつからか次の日の
崩れたケーキのかけらや
箱についた乾いたクリームは
失われた栄光のように
気持ちをしぼませる
虚しさが
喉を突き上げてくる
喜びの歌も、意味のない贈り物も
散らかった部屋で目覚めた朝のように
重苦しい
吹き消されたろうそくの数を数えるのは
灯りの消えた部屋に残された
積み重なった決して消えることのない人生
あなたのバースデーケーキに
ろうそくが立たなくなったとき
願い事はもうなくなった
そして初めて気がついた
バースデーケーキのろうそくの
ただ一つの意味
あなたは生きている
バースデーケーキの上の眩い光
あなたは生きている
そのことだけ
大切な意味