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7話 暇なとき

「はい、今日はこの備品を運んでもらいます!」


さて、放課後。部活に所属していない俺は基本的には何もしないで帰る。


だが、ときどき俺は生徒会の仕事を手伝う。


とは言っても生徒会に所属しているわけではないし、特別な係とかそんなアニメみたいなことはない。


この学校では特別な事情がない限りはアルバイトをすることはできないが、代わりに生徒会主催のボランティアに参加することができる。


ボランティアなのでもちろん現金はもらえないが、学食で使える金券程度が報酬としてもらえる。


「あ、今回も桐林くん参加してくれてるんだね。ありがとー」


これがまぁまぁ使えるし、俺は暇なので、よく参加している。


善意100%ではないのだが、俺の参加率が妙にいいせいで、生徒会メンバーに覚えられている。


俺に話しかけてきたのは、昨年から継続して生徒会に参加している女子生徒だ。確か、3年の山本先輩だった。この人はちなみに彼氏がいるので、センサーに反応しない。そもそもスタイルはすらっとしてるけど、胸がないし。


「あ、はい。あのー何度も言ってますけど、俺金券目的ですからね」


「いいのいいの。偽善でも善意でも。実際に手伝ってもらって助けてもらってるんだから」


ボランティアに参加してくる俺を妙にほめてきて、俺がそこまで善意でやってないといっても全く聞いてくれない。いい意味でだが。


「……むー」


彼氏がいるとは言え、この山本先輩は男女問わず人気がある。その先輩に割と気に入られているので、少し妬みの視線を受けることはあった。


ただ、山本先輩には彼氏がいるので、そこまで露骨ではなかった。今日までは。


今現在進行形でみられている。金髪の女子に。


「おい、橘。なんでやたら俺を見る」


「あなたが変態だからよ。尊敬する山本先輩に害が及ばないか気になるの」


どうやら山本先輩のカリスマはこの人気者ハーフを持ってしても、魅了されるようだ。


「恵梨香ちゃん。大丈夫よ、去年から1年付き合ってるけど、悪い子じゃないよ」


「先輩は騙されてます! 先輩にはあんなに素敵な彼氏がいるんですから、そんな変態男なんて、視界の隅に追いやってください!」


視界の外とは言わないところは橘のやさしさか。


しかし自業自得とは言え、橘にも柏木にもダブルで変態認定されているのは割ときついものがある。


「その話は前も聞いたよ。でも桐林くんは悪意を持ってそういうことをする子じゃないから」


「でも私の……を、見たんですよ!」


「その件については申し訳ない」


「忘れなさいって言ったでしょ!」


無茶なことを相変わらずいうハーフだ。


「まぁまぁ、事故だってんでしょ。水に流してあげてよ」


「だ、だって、今まで私下着姿なんて男の人に見せたことなかったんですよ」


そりゃそこまで見せるもんでもないし。


「初めて見せる人は、白馬に乗った王子様になると思ってたのに……」


夢見るヒロインか! 実際に馬に乗ってきたらキモイだろ。まず日本は王国じゃないから、王子様いないし。


きっと理想が高くなりすぎて行き遅れるタイプだ、かわいそうに。


「もう! あなたは人の嫌がることばかり! 何か私にうらみでもあるの!」


失礼なことを考えていた時に怒られたから、予想以上にびっくりした。


しかし言い回しが気になるな。今のところは俺が橘にした失礼なことといえば、覗き事件くらいで、山本先輩と仲がいいのは気に食わないとしても、俺に落ち度のあることではない。


「なぁ、確かにこの前のことは悪かったが、嫌がることばかりというのはちょっとおかしいだろ」


橘の件は、100%俺が悪いというわけでもない。いくら何でも責められすぎだ。


「してるじゃない! 去年は6回もやってきて!」


「なんの話だ! 俺は去年橘と話したことはないぞ」


「これを見なさい! これを!」


すると橘は前回のテストの成績表を見せてくる。なんで持ち歩いてんだ。


しかしえらい点数だ。1番悪いテストでも92点、100点も普通にあって、平均が95点越え。


「なんだ。自慢するために持ち歩いてるのか?」


「違うわ! よく見てこれを」


英語の点数を見せられる。これも96点、十分すぎるほどいい。


「やはり自慢か? わざわざテストを持ち歩いて」


「違う! 英語の部分を見なさい!」


成績表の英語の下には大きく「2」と書いている。


うちの学校では合計得点はもちろんだが、各教科で全体の何位だったかがわかるようになっている。


ちなみに英語以外は「1」だ。


「そろそろ分かったでしょ、あなたでしょ、毎回私のオール1位を邪魔してくるのは!」


はいはい、何となく察してました。全部1でそれだけ2だから目立つもん。


ほかの教科では平均程度しか取れない俺が、何とか中の上くらいに位置できるのは英語のおかげ。


英語は比較的平均点が低いので、俺は一気に得点を稼ぐことができる。


「……なんでそんな感じなのよ」


「は?」


「ほぼ全教科で1位をとってる私を抑えてずっと英語は1位なのよ! もっと喜びなさい! 私が真剣なのがばかみたいじゃない」


「……わーい」


「馬鹿にしてるでしょ!」


そんなこと言われてもな、よしじゃあもっと。


「わーいわいわい、わーいわいわい、わーいわいわい、わーいわいわい、わーいわいわい、わーいわいわい、わーいわいわい、喜んで」


「ば・か・に・し・て・る・で・しょ!」


さっきより怒ってる。うん、これは俺が悪い。


「大体ずるいわよ! 私の全教科1位を毎回阻止してきて! 1個だけ集中して勉強をしないで、全教科勉強しなさいよ!」


「俺はちゃんとまんべんなく勉強してる!」


なるほど、ちょっと前から言われてた嫌なことばかりというのは、英語のことか。それこそ俺に責任ないだろ。


だが仕方ない、これ以上不機嫌になられても困るし、ちょっと英語のテストで。


「まさかとは思うけど、この前のお詫びにわざと負けようとか考えてたら怒るからね!」


エスパーかよ。


「恵梨香ちゃん、そのくらいにしてね。人はどうしても好き嫌いがあるからそれは仕方ないと思う。でもそれでも桐林くんが手伝ってくれて助かるのも事実だし、私個人としては嫌ってないもの。だからいいよね」



「……はい」


ごもっともすぎる正論に橘は全く言い返すことができない。


「テストもいいじゃん。目標がずっとあるんだったら、勉強頑張れるでしょ」


「……」


「恵梨香ちゃんもよくボランティアに参加してくれてるし、2人が仲良くしてくれると嬉しいな」


「……桐林くんと……、仲良く……?」


うわぁ、基本的に山本先輩にイエスマン、もといイエスウーマンだった橘がこの発言に対してだけは、死んだ魚のような目をしてくる。青い目が濁ってる。


本当に前途多難だなー。






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