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6話 梓の評価

「なぁなぁ、昨日のことは悪かったって。同じクラスで席も隣なんだし、そんなに不機嫌そうな顔すんなよ」


その日は一日中柏木は不機嫌だった。


「ふん、変態が横にいれば不機嫌にもなる。いいか、この線からこっちに入ってくるなよ」


そして柏木は俺と柏木の席の間の木目を指して言う。子供か。


「あー、謎の引力がー」


俺は柏木に接近する。


「ぎゃー! こっちくんな」


席を立って逃げてしまった。何本格的に逃げてくれてんだ。


「相変わらずね……柏木さんは」


「俺はあいつは苦手だ。すぐに怒るしさ」


「その割にプライド高いし……、話しかけても妙に高圧的だし」


俺の耳に柏木の陰口が聞こえてくる。


確かに俺は去年柏木のことはクラスが違ったので、昨日まで本当に知らなかった。


正直見た目だけならかなりレベル高いのだが、去年噂にもなっていなかったし、女子のうわさに詳しいジョニ男もそこまで詳しくなかったことを考えると、要は内面に問題があるということだ。


接した量は少ないが、あれは完全に自ら敵を増やしていくタイプだ。


「桐林君も気を付けたほうがいいよ。去年横の男子はすっかり参っちゃって席替えしたし」


「まじか」


「あれで陸上部に入って活動してるんだから変わり者だよねー」


「正直陸上部でも浮いてる。なまじ成績はいいからあまり文句は言われてないけど」


ほぉ、柏木は陸上部に所属してるのか。意外だ。何もしてないと思ったが。


あいつはどうしてあんなんなんだろう。


今はちょっと現実感がないが、公園で出会った柏木は文句なしにかわいらしかった。


身だしなみも気を使っているようだし、あの感じでいけば全然人気でるだろうに。



「はい、じゃあ皆さん、授業を選んでくださいね」


今日のHRでは来週からの授業を決める時間になる。


この高校では少し特殊な授業のルールを決めている。


必修科目は月、水、金に固め、選択授業を火、木に選ぶシステムになっている。


火曜日の授業を12個から6個選び、木曜日の授業は火曜日と同じになる。


国語系は現代文、古文漢文はともに必須のためなし。

数学系は数学Ⅱが必須で、数学Bが選択になる。

英語系はOCといわれるコミュニケーション系の授業。

理科系は生物、化学は必須で、物理、地学が選択。

社会は地理歴史は必須で、公民、政経倫理が選択。


これ以外に、体育、保健、家庭科、音楽、美術、道徳が選択になる。


ただ、どこに入れてもいいわけではなく、1限目は数学Bか公民、2限目は物理か政経倫理、3限目は地学かOCを選び、4限目は音楽か美術、5限目は体育か保健、6限目は道徳か家庭科となる。


木曜日は科目は同じだが、授業の順番が逆になる。


自ら授業を選ぶというのは面白い。通常は文系と理系に分かれるのだが、人によっては得意科目が分かれる人もいる。俺は英語は大の得意だが、社会は苦手。


文系理系だけで括らずに、選べるのも面白いとは思う。


「えーと、家庭科に、体育に、うーん、音楽と美術なら音楽か?」


俺は真面目に授業を選ぶ。むろん女の子と絡めそうな授業を選ぶため。


正直言うなら俺に家事のスキルは全くない。それなら道徳の授業を真面目に聞いているほうが俺的にはストレスが低い。だが、そのスキルのあるなしにかかわらずやはり家庭科は女子が多い。女子に対して前向きになるといった以上は、多少苦手でも挑戦だ。


「ねぇ変態男」


「…………」


気の毒だな。誰だ変態男と呼ばれて。


「ねぇ、聞いてる変態男」


俺の耳にさっきより大きな声で言ってくるが、誰のことだ。


「……、あんたのことよ!」


俺に指をさされる、振り返ってみる。


「失礼だろ。高橋君を変態男とかいうなんて」


俺の後ろの高橋君がきょとんといた顔をする。そりゃいきなりそんな風に言われたらな。


「違う! あんた、えーと名前なんだっけ!」


「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺は桐林樹、いっきーと呼んでくれよ」



「あんた、その表を見せてよ」


俺の懇親のボケはスルーされて、俺の書いたプリントのほうに興味を持たれた。


「なんのためだ? 現状柏木は俺になんの興味も持ってないだろう」


別に話しかけられてうれしくないわけではないが、勘ぐってしまう。


「今はあるんだ。とにかく見せろ!」


「へいへい」


徐々に声が大きくなってきたので、あきらめて渡す。


「1限目数学B、2限目物理、3眼目地学で、選択は美術、保健、道徳……」


「おいこら。なんで俺の時間割勝手に書き換えてんだ」


「あんたと授業かぶりたくないのよ!」


「えらい嫌われてんな。というか、それならお前が授業変えろよ」


「あちょっと」


俺は柏木のプリントをひったくる。


「完全に被ってんな……」


「う、うるさい! 男なのに家庭科とか選んで、下心まるだしじゃん! それなのに、保健は選んでないし!」


「俺がお前のを書き換えてやる。えーと、数B、物理、地学、美術、保健、道徳っと」


「おい、何してんだ!」


「いいじゃないか、もっと理系科目を学んで知的になり、保健を学んでもっと男を知り、美術で心を落ち着け、最後に道徳。実に柏木に必要だろ」


「勘弁してくれ! 体育と家庭科がなくっちゃ私が死んじゃう!」


かわいそうに、俺の横の女子は体育と家庭科を受けないと死んでしまうようだ。


「しかし俺も体育はやりたいし、理系科目は苦手だ」


「そんなのは私も一緒だ」


「一緒だな」


「うん、一緒だな! ってうれしくねー!」


うーむ、とりつく島なし。


「なぁ、やっぱりまだ公園でのことで怒ってるんだよな」


「ん?」


「ああ、あのシロクマ激突事件」


「レスターだっての!」


割と乗りのいい柏木。いわゆる突込み系なのだ。


だが、どうも言い回しがきついのが、女子に受けがよくないようだ。







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