深緑
俺の弟、和人はとにかく静かだった。
正直なところ、もっと素直になったり
感情を表に出して欲しい。
彼はその静かさ故に
属性分けは青魔法になっている。
彼のニックネーム、セイもそこからだろう。
「兄ちゃん」
彼は優秀で綺麗な顔をしている。
俺とは大違いだ。
弟は自分がモテていることに気づいていない。
「セイ…そのハートのシール…それラブレターじゃね?」
「ん…あぁ。読んでみるよ」
「…」
「完全にラブレターじゃん」
「いや…イタズラでしょ」
と、セイは早足で家に帰った。
まぁ顔は真っ赤だったし
多分嬉しかったんだと思う。
しかし、彼はクールでいたいらしい。
そんなところもセイらしくて好きだ。
俺たちに親はいない。
同時に、俺たちに疑いはない。
だから、俺がセイを守らなきゃ。
「緑青君ですか?」
ろくしょう。この国では名前を名乗るということをしない。
苗字で呼ばれたことに違和感があった。
「はい…どちら様で?」
「親戚の者です。その声だと拓斗君か。」
「もしかして蒼村さん?」
内容は、俺らの面倒を見てくれるという女性が見つかった。
という事だった。
「蒼村さん。俺ら別に母親役なんていなくても…」
「役じゃなくて母親になるんだよ。
和人君の画材も彼女は払うって言うし。」
「…」
邪魔、とでも言いたそうな顔だった。
しかし実は俺も同意見で、今まで2人でダラダラ生きてきた以上
監視がつくとキツい。
家に帰ると、自己紹介をしてくれた。
「私は優!えっと、和人に拓斗ね!よろしくね」
名前通り優しそうな人だった。
俺はまぁいいかと「よろしく。えっと、母さん。」と笑う
しかし隣のセイは無愛想に部屋に戻って行った。
「…やっぱり、嫌よね。」
「まぁ誰であろうとあんな感じだよ。
疑問なんだけど…なんで俺らの面倒見るの?
会ったことないよね?」
「うん。私妊娠してたんだけど…ちゃんと産んであげれなくて。」
なるほど。どうやら俺らである必要はないらしい。
「そっか。ごめん悪いこと聞いて。
俺らはある程度自分で出来るし気を使わなくていいよ。」
彼女はふわっと笑ってありがとうと言った。
俺はこの人を信用していた。




