第七幕 切れる糸
お久しぶりです。藤波真夏です。長期間失礼しましたが、やっと完成しました。最後まで読んでくれたら幸いです。
第七章 切れる糸
それからというものの、旭はメキメキと頭角を現し始める。旭の中にある才能という化け物は紅葉の言う通り、今では可愛い仔猫だ。成長ぶりには大木も驚かされた。
修行の傍、旭は大木の執筆の手伝いをすることになっていた。主に原稿を出版社に届ける、大木が執筆しやすいようにお茶などを妻に代わり行った。
小説家の卵でありながら現在は若さを武器に様々なことを学んでいる。忙しくてなかなか足を運べなかったが久しぶりに国立図書館に出入りをするようにもなった。
旭の人生は次第に輝きを取り戻し始めたのだ。小説が世にでるのはもう少し先の話。気長に待とうという精神が旭の心を支え続けていた。
今日は久しぶりの休日だ。アルバイトもない。大木も仕事で家には不在。旭はアパートから出て帝都を歩き始める。
久しぶりに実家に帰って家族水入らずの時間を楽しんだ。旭の両親もまさか息子が大木夏目の一番弟子になるとは思いもしなかった。
「まだまだこれからだ。厳しいこと続きかもしれんが、頑張りなさい」
「はい」
父からは激励をもらう。旭の文学好きをすぐさま見抜き、帝都最高峰の国立図書館を奨めた人間だ。
実家を後にして帝都を一人で散歩する。一日休みだと様々なところに行くことができる。最初はウエノの噴水広場へ向かう。相変わらず帝都の人々の憩いの場だ。煉瓦造りの建物が並び、ノスタルジックな雰囲気が漂う。
帝都生まれでよかった。
この言葉に尽きる。
アパートに戻ると、相変わらずの静寂がある。
一人は本当に寂しい。こういうときこそ人の温もりが欲しくなってくる。静寂というものは本当に恐ろしい、と旭は実感した。やはりアパートでじっとしていることなど出来ず、再び帝都へ繰り出した。人通りの多いところだと旭の放つ紅薔薇オーラが惹きつける。ジロジロとこちらを見てくる。
「慣れないものだ・・・」
旭を縛る茨はまだ消えてはいない。そんな旭の苦しみなど知る由もない人たちは道を行き交う。旭のため息が帝都に消えていった。
不安の種はまだある。小説のネタを探して街に繰り出してもなかなか閃かない。突発型の影響が出ている。結局最後にはため息が残る。
一方神楽坂のお店ではすずが得意の三味線を聞かせていた。部屋から弦を弾く音が響く。美しい着物が映える。泉はすでに血の滲むような努力と仕事をこなし、なんとかすずを身請けすることに成功した。
すずは少しでも家計を助けるために泉に申し出て定期的に芸者として復帰している。泉は心配だったがすずの説得に負けた。腕はめっきり落ちていない。すずが外を見ると、
「あれは・・・紅原さま?」
旭の姿が眼中に入る。すずは二階を降りてすぐに玄関へ走る。
「紅原さま!」
「すずさん?」
旭が振り返るとすずが小走りでこちらへ来る。どうしてお店にいるのか? と聞くとすずはかくかくしかじかと語った。外で話すのもあれだからとすずは旭を店に誘う。
近況報告をすずにする形になっていてすずはそれをただ静かに聞いていた。旭が泉の様子を聞くと相変わらず森先生のもとで助手の仕事をこなしており、編集者が出向くことはなく泉が原稿を持って出版社に持っていく作業もしている、と言った。
「何かあったのですか?」
「なかなか小説のネタ思いつかなくて。うまくいかないです、なかなか」
すずは急須からお茶を注ぎ旭に差し出す。
「そこまで深刻に考えてもネタは浮かびませんよ。ごく自然に思いつくのが一番いいネタというものです。深く考えたらいいネタも思い浮かびません」
すずの助言に旭はそうですよね、と言った。すると部屋の襖が開いて泉が入ってきた。
「紅原?! どうしてここに?」
「旦那様。私からお誘いをいたしまして」
「すずさんが店の中へどうぞ、と」
泉はそうか、と座った。泉はすずの迎えにやってきたという。今日は久しぶりの休みだから帝都を歩き回っていたということを旭は伝えると、そうか、と泉は頷いた。すると泉は旭を夕飯に誘う。
「すず。どうだろう?」
「ええ。紅原さまなら大歓迎です」
すずも承諾し、旭は泉夫婦と共に高野邸へ向かった。
紅葉の部屋の一室でタイピストを打つ音が聞こえる。
紅葉が新聞記事をタイピストで打っていた。最初は白紙だった紙がだんだんと文字で埋まっていく。記事の内容は森凛太朗に関する記事だった。大木の記事をよく扱う紅葉はすでに文豪取材の常連となりつつあった。
『森凛太朗氏、新作発表。新人賞二期待込メル
森凛太朗氏ガ新作小説ヲ発表シ、明日ヨリ書店ニテ販売サレル。題名ハ「ヰタ・セクリリス」。早クモ評判二ナリツツアル。現在森氏ハ、新聞ヤ雑誌二短編ヲ出品シ掲載サレテイルガ長編小説ハ数年ブリダトイウ』
打ち終わると紅葉は息を吐く。そして部屋の隅に置かれた荷物を見てまたため息をつく。いまさら変えることなんてできない。揶揄される過酷さを消す代償として大切なものを一気に失うということの恐ろしさを今体験している。
「あの人に、言えない・・・。あの人にだけは・・・」
紅葉はすすり泣いた。結局誰にも言えず紅葉はただ苦しみ抜いた。
それから数日後、紅葉の最終出勤の日がやってきた。新聞社では同僚の阿部や上司の谷崎がお前を失うのは痛手だ、と言ってくる。一方向こうでも頑張ってくれ、と激励をいただくこともできた。
紅葉は谷崎に昨晩仕上げた記事を提出して今日の仕事は終わり。そして日本での最後の仕事が終わった。谷崎に短い期間でしたがお世話になりました、と礼を述べると谷崎は言った。
「君を手放すのが辛いよ。でも何かあったらすぐに帰っておいで。白河ならいつでも俺の下につけばいい」
「元気で」
谷崎と阿部は紅葉の後ろ姿を見送った。すると阿部は思わず叫んだ。
紅原さんには、伝えたんですか?
紅葉が止まる。耳には会社内の騒音が全く入ってこなかった。紅葉は何も言わず新聞社を出て行った。
言えるわけないじゃない・・・。彼は紅薔薇。私は白薔薇。このことを知ったら彼は、壊れてしまう。彼の夢を一気に壊してしまう。突発型小説家だからこそ、私は何も言わずに消えた方がいいんだわ。
紅葉はそう言うと一人とぼとぼと歩き出す。家のある方向ではなく真逆の方へ歩き出していた。向かう先には自分が地獄のような暗黒時代を送った女学校。今日はどうやら休みらしい。門を入り、中庭へ入る。中庭には紅白薔薇が咲いている。この薔薇こそ、紅薔薇・白薔薇の言われになったものである。
ごく普通の学生だった二人を襲った元凶---。
紅葉は今すぐにでもこの薔薇を伐採したい気持ちがまだ心の中にある。自分が今植木用はさみを持っていないことを光栄に思え、と薔薇に当たる。
罪深い薔薇。よくも私をこのようなことにしてくれたな。あなたは知ってるの? あなたのせいで様々な悲劇を生んでいることを---。
私はあれから色々と調べた。かつて紅白薔薇に選ばれた人は過去にも大勢いる。しかし、彼らはもうこの世にはいない。多くの人間がその重責と弾圧に耐えられず、自ら命を絶ちそして病気にかかって命を縮めてしまった。
でも私はこうして、生きている---。そして、彼も今必死にもがいて生きている。
罪深き薔薇よ。そこで見ていればいい。お前の茨にいつまでも囚われて身動きが取れないわけではないということを。
紅葉の髪が風に揺れて薔薇の花びらが風に舞った。それを見つめる紅葉の目はとても鋭かった。薔薇に背を向けて女学校を後にした。
旭は休み明け、大木の仕事の手伝いに追われていた。原稿を出版社に届ける日々を送っていた。そんな時、毎日新聞社から阿部が大木の家にやってきた。今日は取材ということで大木は丁寧に取材に応え、旭はその隣で控えていた。
取材終了後、阿部は申し訳ございませんと一言断りを入れると旭に話しかけた。
「これは余計なお世話かもしれませんが」
阿部は紅葉が明日、早朝に異動でアメリカに行くことを伝えた。すると旭は顔をこわばらせ固まった。旭はすぐに立ち上がり大木の家を出て行った。
「阿部さん。彼の思うままにしてあげてくれませんかね?」
「大木さん」
「紅原くんはもう子供じゃない。大人の男だ。彼の好きなようにさせてあげようではないか。保護者代わりは静かに見守るだけだ」
大木の説得に阿部はこれ以上動かなかった。
旭は帝都を走り抜けた。紅葉がいそうなところを徹底的に漁った。毎日新聞社、ウエノ公園、国立図書館なども探したが見当たらない。紅葉の家にも行くがすでに出払った後。人が住んでいる形跡一つない。
だんだんと暗くなる帝都を走る、走る、走る---。どこにそんな力が備わっているのか驚きである。結局紅葉の居場所を突き止めることはできなかった。
家に戻ることもできず、ウエノ公園のベンチに座り絶望に浸る。完全な自己嫌悪に陥る。紅葉を手放すなんて僕にはできない、と決めていた思いは揺れに揺れて自分自身を追い込んだ。
旭が抜け殻のようにしているとき、だんだんと空が白み始める。太陽はまだ登っていないが夜明けが近い。そういえば早朝にアメリカに向けて出発すると言っていたことを思い出す。
旭は気力を振り絞る。国立図書館の前を通り過ぎると張り紙が貼られている。それを見た旭は血相を変えて走った。
その張り紙にはこう書かれている。
『アメリカ行キ 客船早朝六時出発。出発地 台場』
旭は急いで出発地の台場へ急いだ。様々な公共交通機関を乗り継ぎ台場へ到着した。そこには大きな船と大きな荷物を持った人々が。これからアメリカに向けて出発する人々らしい。
旭は走って名前を呼んだ。
「紅葉! 紅葉! どこだ?!」
するとそれに反応する人物が。白い服に黒い髪。髪にはかつてすずからもらった白薔薇の髪飾り。顔を確認した旭は急いで紅葉の元へ寄る。
「どうして教えてくれなかったの?! なんでアメリカになんか! どうして?!」
「異動願が受理されただけのことよ。これは私自身が決めたことだしね」
「じゃあどうして一言声をかけてくれなかったの?」
「それは・・・」
紅葉が言葉を濁す。旭は紅葉の口から言葉を待つ。しかし旭は待ち切れず口火を切る。
「約束したじゃないか。夢を叶えて、紅白薔薇のしがらみから解放されようって・・・忘れたの?」
「・・・忘れるわけないじゃない。これが私の望んでいたこと。でも、今になって少し後悔してる」
「後悔?」
「だって、あなたやお世話になった人たちと離れ離れになるなんて辛すぎるもの」
紅葉はそう訴えた。もう願を撤回することなどできない。指示には従わなければならない。紅葉はそう言って納得のいかない旭を諭す。
沈黙の長い時間が続き、旭は今にも泣きそうな顔をしているが恥ずかしさからか顔を伏せて紅葉には見せないようにする。
すると紅葉の口がゆっくりと動いた。
「旭」
「え・・・」
紅葉が紡いだ言葉が聞こえて来る。初めて聞いたその名前。旭は心の中がじわっと熱くなった。今まで自分の名前を紅葉は決して呼んでくれなかった。大粒の涙が旭の肌を伝う。
「やっと、呼んでくれた・・・」
旭は紅葉を腕の中に閉じ込めた。大きなカバンなど構わずに温もりを求めた。紅葉の体は小さく華奢に見えた。しかし軸がしっかりしていて華奢ではないとわかる。
「アメリカに行けば、もう白薔薇と揶揄する者はいなくなる。私自身が願ってもいないことだった。その念願叶うのに、どうしてこんなに悲しいのかしら」
紅葉も涙を流す。旭はその涙をぬぐった。
「引き留めたりしないんだね」
「引き留めたところで君はそれでも行くと思って。引き留めたいよ、ずっとこのまま・・・」
しかし水平線から太陽が昇り始める。光が朝の訪れを告げる。紅葉はもう行かなきゃ、と旭の腕から出る。荷物を持って後ろを向いた。すると旭は叫んだ。
「君は、綺麗だ! 綺麗な薔薇だ! 僕の心を掴んで離さない薔薇の花だ! 僕は紅葉、君を慕っている」
「・・・バカね。私もよ。あなたは私の紅薔薇よ。私の心を掴んで離さない・・・」
すると紅葉は旭の頬に口を寄せた。桜色の濡れた唇が旭の頬に触れた。柔らかい感触に旭はその場で固まる。紅葉はいたずらのようにニッと笑った。そして真っ白な薔薇の花を旭に投げた。旭の目の前で薔薇の花びらが舞った。純白の真っ白な薔薇が---。
そして紅葉を乗せた客船はアメリカに向け出発した。大きな汽笛の音が響いた。それを一人見つめる旭は涙が止まらなかった。口付けされた場所はほんのり熱い。風が吹いて髪を揺らす。これも薔薇の運命なのか、と問いかける。しかし、着物に引っかかった白薔薇の花びらを見つめる。それをおもむろに口元に運んで口づけをした。
「僕は、君に恋い焦がれている。どうして僕を置いて遠くに行ってしまうんだ。どうして・・・」
旭の思いを乗せた薔薇の花は空中に舞った。
その後、まるで魂が抜けた抜け殻のようになって家路に着いた。旭は家には帰らず大木の家に帰ってきた。大木の妻が声をかけても旭は反応しなかった。行方を心配していた泉と大木は旭が帰ってきたことを聞いて大木邸へかけ込んだ。そこで見たのは落ち込み抜け殻のようになってしまっている旭の姿だった。
縁側に座り下を向く旭を心配そうに見つめている大木と泉。泉が手を差し伸べようと近づくも大木に制止させられる。
「大木先生」
「うん。君の言いたいことはわかる。でもこれは君の出る幕ではない」
大木はそう言って旭のそばへやってくる。
「紅原くん」
「大木先生・・・」
「今君の中には溜まりに溜まった想いがあるだろう。それを文字にしなくてどうする?」
旭はハッとなって見上げる。溜まった想いを文字にし物語を紡ぎ出す、それは大木が旭に何回も言っていたこと。小説家として大切なことだった。それを言うと大木は部屋を後にした。泉は旭の隣に座る。
「泉さん」
「紅原。書け」
「へ?」
「小説を書けって言ってるんだ。お前の中にある血は沸騰してないのか? お前は紅葉と別れた時、なんとも思わなかったのか?」
それは! と言葉を続けようとした瞬間、心の中で鈴の音が響いた。脳裏に浮かんだのは真っ白なドレスに身を包んだ紅葉の姿。微笑むあの姿は忘れられない。旭は我に返った。手元には原稿用紙とペンが置かれていた。泉が置いたのだ。
「小説を書け、というのはいささか強引で無慈悲に思えるかもしれない。だが、お前のやるべきことをちゃんと達成しなきゃいけない。お前が抱えた苦悩、彼女の抱えていた苦悩、葛藤、そして紅白薔薇によって歪められた人生・・・。一番身をもって痛感しているお前だからこそ書けるものだ」
泉はそう言って部屋を出て行った。その日、旭は抜け殻状態から脱することはできず結局大木の家に一泊することになってしまった。
部屋にただ一人残された旭は目をつぶって瞑想をしていた。胸の奥が苦しい。不謹慎ながら言葉が溢れて止まらない。小説家の性だ。
僕にできること・・・。
それは紅白薔薇として生きることを強いられてしまった僕たちの苦悩や悲しみ、心を描くこと。紅白薔薇の光と闇、陽と陰、プラスとマイナス、そして栄光と蔑み。世の中は勘違いが多すぎる。紅薔薇も白薔薇も良しも悪しもないというのに印象だけで決めつける。きっとそこには何かがあるのだろう。
旭は吹っ切れたように原稿用紙に向かった。
「どうやら、火がついたようだね」
その様子を見ていた大木は笑った。旭は一心不乱に書きなぐり始めた。筆の止まることは知らない。さすが突発型というべきか。突発型の才能を発揮し小説は二週間ほどで完成した。作品を大木に見せたところ、大木は笑ってこう言った。
「紅原くん。素晴らしい・・・。デビュー作にふさわしいよ」
旭は頭を下げて礼を述べた。大木の真似ではない自分自身の文体で紡ぎ出されたものだった。すると大木は旭に対して言った。この作品を世に出す覚悟はあるか? と。旭の書いた小説はあの紅白薔薇をテーマにしている。それは帝都に根付く闇に対し異議することと同じであると諭す。それでもいいのか? と大木は問う。
旭は少し黙った後語り始めた。
「毎日新聞社の阿部さんから聞いたんです。かつても紅白薔薇に選ばれた人たちがいたと。でも彼らは長生きできなかった。その重責と弾圧に耐えられず自殺の道を選ぶものもいれば、精神に異常をきたして命を自分で縮めた人もいる。でも、僕も紅葉もこうして生きていることができる。僕たちを含め、時代の犠牲者かもしれないと思ったんです。決めつけて、罵って・・・。僕たちもそれに匹敵する悲しみを味わってきたつもりです。これ以上、悲しみを増やしてはいけない。薔薇の茨に囚われて未来を奪われ、棘で血の涙を流すような人たちを僕は、見たくないんです・・・」
旭の意図を汲み取った大木はわかったとつぶやき、小説家の師匠としてもし多くの人々に作品が悪い意味で晒されたら、手を差し伸べて匿ってやろうと言った。大木は旭に提案をする。
「実はもうすぐ新人賞の出品の締め切りが迫っている。これは出版するだけじゃもったいない。応募をするべきだ」
「応募?!」
こうして旭の魂のこもった小説は大木の推薦により新人賞に出品された。
この作品は史上初の紅白薔薇をテーマにした小説で主人公の「僕」が平凡な生活から紅薔薇に選ばれたことで一変し、さらに白薔薇に選ばれてしまった「彼女」との交流、挫折、苦悩などが描かれた作品となった。この中には旭の体験が生々しく綴られている。そこに対する思いや後悔、希望が旭の目線で描かれていた。
この帝都に紅白薔薇によって人生をねじ曲げられた人たちがいる。
それを世間の人たちに知らしめた、強烈な作品となった。あまりにも悲しすぎる現実に人々は心を打たれた。
旭のデビュー作は大木の門下生という大きな肩書きと強烈な出来事、自分が紅薔薇だ、ということの告白。巷で話題を呼び、新人賞に出品されていた無名の作品はついに最年少文学賞を受賞する運びとなったのである。
君はまるで春風のように突然現れて消えてしまった。
黒い鉄の塊から聞こえる汽笛の音が虚しく響く。白いドレスに身を包んだ君に手を差し伸べてもすり抜ける。
白薔薇の姫、どうか、君に幸多からんことを・・・。見守っていてくれ、紅薔薇の僕にも幸せの風が吹きますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次で最終章です。評価&感想等よろしくお願いします。
☆Manatsu Fujinami☆