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月一恒例のアレ

「あ、優君? こないだはどーも……え、まだ根に持ってるの? やだなぁ、執念深いんだから」

 何があったんだ?

「ちょっと相談に乗ってほしいんだ。旅館経営のことで……うん。明日こっちに来て……え、無理?……忙しいのはみんなそうだよ……来月? そんなに待っていられないよ。100歩譲って明後日だね」

 無茶苦茶言うな! と電話の向こうから男性の声。

 

 すると和泉は、

「ふーん。じゃああの時のこと、さくらちゃんにバラしてもいいんだね? ガッカリするだろうなぁ、彼女。逆にここで僕の言うことを素直に聞いたら、評価が上がって惚れ直してくれるよ。もしかしたら、もう月一恒例のアレはなくていいとか言ったり……するかどうかは保証の限りじゃないけど……」

 なんだかわからないけど、脅してるみたいだ。

「いいの? ほんとに? いやぁ、初めからそう言ってくれればいいのに……」

 今の和泉はものすごく悪人顔をしている。


「場所は宮島。詳しいことは後でメールするから、じゃ、よろしくー」

 通話は終わったらしい。


「明後日、早速来てくれるらしいよ。女将さんと美咲さんに話しておいた方がいいね」

「う、うん……」いいのか?「あの、なんていう人?」

「タウンページ」

「え?」

「人の顔と名前はまったく覚えられないくせに、顧客の屋号と電話番号と住所は電話帳並みに頭に入っているらしいよ。本名は、有村優作ありむらゆうさく。ちょっとクセの強いタイプだけど、悪い人間じゃないから安心してね」

 和泉をもってしてクセの強いタイプと言わせるとは、かなりのものだろう。

 どんな人だろう? 少し不安になる。


 そのすぐ後、和泉の携帯電話が鳴り出した。

「あ、聡さんからだ。迎えに来いかな? ……はいはーい、迎えに行きますから、車道の真ん中に立っていてください……冗談ですよ、冗談」

 和泉は立ち上がり、

「じゃ、ちょっと行ってくるけど、ここで留守番する?」

「ううん、帰るよ」

「そう、じゃあまたね」

 車の鍵を取りに向かう和泉の後ろ姿を見つめながら、周は後を追いかけ、

「和泉さん! ありがとう……」と、背中から抱きついた。

 広い背中はとても暖かい。


「……周君……」

「なに?」

「ちょっと、鼻血出そうなんだけど」

 

 それを、俺にどうしろと?


 ティッシュ、どこかにあったっけ……?

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