宮島水族館へようこそ
イラストは古川アモロ様よりいただきました。
素敵でしょ?
経営コンサルタントなる人やファイナンシャルプランナー、そう言ったプロに相談するにも相談料がかかると知った周は、いったいいくらかかるんだ……と暗澹たる気持ちになってしまった。
高い金を出して買った健康食品が、まったく効果がなかったのと同じようなことがあったとしたら、それこそ無駄なお金を払って余計に経営を圧迫するだけだ。
「周、難しい顔してどうしたの?」
約束の連休初日。美咲と、智哉とその妹、円城寺とその妹弟の合計11人で宮島にある水族館にやってきた周だが、頭の中は旅館の建て直しのことでいっぱいだった。
円城寺の下から2番目の弟で尚史ははじめ、周に肩車をしてもらって喜んでいたが、何を話しかけても生返事しか返ってこないので、その内に黙りこんでしまった。
「うん、いろいろ……」
答えになっていないことにすら周は気付いていない。
休日はどこも混雑するが、この水族館も大勢の家族連れやカップルで混雑していた。
傍を通りかかった家族連れを見て、周は思った。
いつか彼女も本当に好きな男との間に子供を設けて、家族揃って、こんなふうに海の生き物たちを見ることができたらいい。
混雑していたので、どうにか半分ほど回り終えたら正午になっていた。
お弁当広場と称するテーブルとベンチの設置された場所へ移動する。
ただでさえ人数が多い上、子供が多いとなると外食は無理だろう。ということで、各自お弁当を持参してきた。
「今日は、お天気が良くてほんとに良かったわね」
美咲は円城寺の弟達におにぎりのラップをはがしてやりながら言った。
うん、と返事をしながら周も紙コップにジュースを入れて、智哉の妹に渡した。
「お前たち、走りまわるな!!」
円城寺が大きな声で叫んだが、聞いていはいない。
彼の弟のうち、次男と三男は手におにぎりとジュースの入った紙コップを持ったまま、追いかけっこをしている。
危ないな、と思った時には既に遅かった。
三男は近くを通りかかった知らない男性の脚にぶつかって、転んでしまった。
「ああ、ほら!」
円城寺はすみません、と男性に謝ったが通じていないようだった。
と、いうのも相手は金髪碧眼の外国人だったからだ。
相手のズボンの裾にはジュースの染みが広がっている。
白っぽい生地だけに、オレンジの色が目立ってしまう。そして、肌の白い男の顔はみるみるうちに真っ赤になった。
男は三男坊の首根っこをつかむと、自分の目線に持ち上げ、知らない言語でものすごい勢いで喚きだした。それから男が拳を振り上げる。
周が止めに入るより先に、これまた謎の言語で彼を止めた白人女性の声があった。




