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少年会議

「ふわっくしょん!!」

「……風邪か?」

 周は友人から差し出されたティッシュを受け取り、鼻をかんだ。

 円城寺と智哉の三人で一緒に昼の休憩時間、教室で昼食をとっていたら、急になぜかくしゃみが出た。

「誰か、俺の噂してんじゃねぇか?」

「和泉さんだったりしてね。周君、今頃お昼ご飯食べてるのかな~、とか」

 智哉が笑いながら言う。

「ありうるな、それは」

 円城寺も同意する。かもな、と周も思った。

「ところで周、一つ聞きたいんだが」

 分厚い眼鏡の向こうから、切れ長の目がこちらを真っ直ぐに見つめてくる。

 周は思わず箸を銜えた状態で動きを止めた。

「あの、和泉さんと言う刑事とはどういう関係なのだ?」

「ど、どうって……単純に隣に住んでいる、変な中年……」

 周の中で妙な焦りが生まれた。


 気まずさをごまかすため、慌てて緑茶のペットボトルに口をつける。

 単なる隣人? あるいは、友達の一人と言っていいのだろうか?


「本当にそれだけか?」

「……なんだよ、それ。刑事みたいな訊き方しやがって」

 すると円城寺はすまない、と眼鏡のつるを持ち直した。

「どうも君の口から出る名前で一番多いのが、その『和泉さん』だから、何か特別な関係なのかと思っていた」

 特別な関係?!

 周は思わずお茶を吹き出しそうになるのを、辛うじて堪えた。

「あ、やっぱり信行もそう思う? 僕もそう思ってたんだ」

 智哉が追い打ちをかける。


 ごっくん。どうにか口の中のものを飲み込む。

「特別ってなんだよ? 俺は別に、あの人のことどうこう思ったことなんてねぇよ。変な人だし、基本的に何を考えてるかわからないし……」

 急に兄のことを思い出した。

 あの二人はよく似ている。


 醸し出す雰囲気、そして優しいところ。

 でも兄の賢司は優しいフリをしているだけだった。


 またしても暗い気分になりかけて、周は軽く首を横に振った。

「僕の見たところ、あの人はかなり屈折した性格の持ち主だな」と、円城寺。

 何を今さら……。

「無理もなかろう。刑事と言うのは職業柄、常に人の悪意、マイナス感情に晒されているものだからな。精神的な疲労を覚えることだろう。だからきっと、周のように真っ直ぐな性格の人間といると癒されるのだろうな……」

「うん、僕もそう思う。和泉さんは周から元気をもらいたいんだよ、きっと」

「……」

「しかしまぁ、いずれにしろ奇怪な人であることに変わりはない」

 午後の授業が始まる5分前を告げる、予鈴が鳴った。


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