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アウトレット(?)

 元々何を考えているのかさっぱりわからない人間だが、一緒に働き始めて毎日顔を突き合わせるようになったら、ますます謎が深まった。

 その上どういう訳か、この頃、機嫌の悪い日が多い。


「そ、そのうち……ね?」

「そのうちっていつ? 明日、明後日?!」

 子供みたいなことを訊く。

 結衣が返事に詰まっていると、郁美は急に話題を変えた。

「で、どうだったの? そのご褒美デートは」

「すごく楽しかった……」


 その日のことを思い出すと、結衣は今でも夢見心地になってしまう。

 職場を出てから二人きりで商店街を歩いた。

 ケーキが美味しいと評判のカフェに入って、カウンター席に並んで座った。

 

 聡介は笑顔でずっと結衣の話を聞いてくれた。ほとんど自分が喋ってばかりなのに、彼は時々頷き、質問を挟んでくれた。


 ふーん、と郁美はたいして興味もなさそうな相槌をうち、

「でもさぁ」郁美は野菜スティックを齧りながら言った。「高岡警部って独身だけど、何か訳ありなんでしょ?」

「何よ、訳ありって……」結衣は急に、不穏な気持ちに駆られた。

「普通に離婚した訳じゃなくて、元奥さんが何か事件を起こしたとかなんとか……」

 知らなかった。

「元奥さんは生きてるのか死んでるのかわからなくて、失踪して7年が経過したから死亡とみなされた……らしいわよ」

「……何それ」

 初めて聞いた。「どうしてそんな話、知ってるの?!」

 郁美は溜め息交じりに答えてくれる。

「うちの課長って、高岡警部と同期なのよ。あと、相原班長も。班長は高岡警部と仲良しなんだけど、課長はさ……ライバル視してるわけ。昇進も向こうが早かったし、実績も上だし。みっともないわよね、男の嫉妬って。こっちが聞きもしないのに、そういう情報を吹き込むの」

 そんなことはどうでもいい。

 結衣は黙って話の続きを待った。

 

 郁美はサワーをぐいっと飲み干すと、店員呼び出しボタンを押す。

「この春から新しく高岡警部を長にして、捜査1課に新しい班ができたじゃない? 集まった顔ぶれを見た?」

「えっと、和泉さんでしょ? 駿河さんと、日下部さん、それから……友永さんに、今はもういないけど確か三枝さんっていう……」

「この人達の共通点って、知ってる?」

「……共通点?」

 郁美はやってきた店員にライムサワーを注文してから言った。

「全員、一度は監察に目をつけられたことのある人達、もしくは上が、その内に何かしでかすんじゃないかって危機感を持ってる人達。つまり……過去にしろ現在進行形にしろ何かしら問題のある人を集めてみたってところよ」

「……和泉さんや友永さんはわかる気がするけど……駿河さんはまったくわからない。日下部さんも、どこが問題なの?」

 前述の二人は確実に上から睨まれているだろうと容易に想像はつくが、後の二人はよくわからない。

「私だって詳しいことは知らない。課長から聞いただけだし」

 ということは?


 結衣の頭に嫌な予想が浮かんだ。

 私も、何かしら問題のある警官だって思われてるってこと?!


 しかし郁美はそんなことよりも、と再び迫ってくる。

「で、いつ和泉さんとのデート、お膳立てしてくれるのよ?」

 あぁもう……面倒くさいなぁ。

 ぬるくなった生ビールがやけに、苦く感じられた。


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