総員、突入!!!!!
準備は整っている。
後は突入の合図を待つばかりだ。
全神経を耳に集中させる。
ぱさっ。
手袋が落ちた音。
カウントダウン開始。
3、2、1……。
『総員、突入!!』
突然、部屋中が真っ暗になった。
停電だ。
それから、ガラスや他の何かが割れる大きな音が響く。
ドカドカと複数の大きな足音。そして怒声。
いくつか空気を切り裂くような感覚がすぐ傍をかすめた。
うめき声が聞こえた。恐らく進一だろう。
微かに血の匂いがする。
そして何か、焼け焦げたかのような臭いも。
何が起きたのかわからないが、気がついたら周の両腕も足も自由になっていた。
周は急いで起き上がり、暗がりの中、とにかく外へ……ああ、でも猫がまだ……あれこれ考えていた。
「周君!?」
和泉の声だ。
「和泉さん!!」
周は声の限りに叫んでみた。
ふわり、と身体が浮き上がるような感覚。
ああ、いつものだ……。
安心したら一気に力が抜けた。
だけど、まだ安心できない。いろいろと大きな音が聞こえる。
物が壊れて砕ける音も。
誰がどう言っていて、何がどうなっているのかさっぱりわからない。
でも、そんなことはいい。
周はきつく目を閉じた。
「来るぞ!!」
ガチャガチャ、玄関のドアが開こうとしている。
駿河は銃を構えた。
鼓動が早まる。
「待て! こういう時は……これだ!!」
そう言って日下部が取り出したのは懐中電灯。
彼は玄関に向かって灯りを照らす。
扉が開く。
西島進一が飛び出してきた。
「こっちを見ろ!!」
日下部の声に反応した進一だが、目にライトを浴びせられると、眩しそうに両手で目元を覆い、そのまま廊下に膝をついてしまった。
電力会社に協力を要請し、意図的に停電を起こすと聞いていた。その時が突入のタイミングだと、も。
暗い所から急に明るい所へ出ると、眩しさに目が追いつかない。
【暗調応】というやつである。
「葵!! そっち行ったぞ?!」
友永の声に呼応し、駿河は手錠を取り出す。
西島進一の腕にその鋼の輪は、綺麗にはまってくれた。




