表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/243

コーヒー屋さん

 なんとなく約束の時間より早く到着してしまった。

 

 しかし、新里の方も早く来ていた。

 

 開いている店はあるだろうか? 落ち合った二人はしばらく、本通り商店街を歩くことにした。

 

 それにしても今朝、洗濯物を干している間に感じた悪寒はなんだったんだろう?

 風邪でも引いただろうか。


 挿絵(By みてみん)


「懐かしいな。ここは通学路でね、よく悠司と二人で歩いたよ」

「……どんな話をしたの?」

「いろいろね」


 やっと営業している店を見つけた。

 2人は中に入って向かい合って腰かける。


 いずれもホットコーヒーを注文した。


「ねぇ、おじさん。今日本番だろ? 調子はどう?」

 すると新里は苦しそうな表情を見せた。


「今日、君を呼び出したのは……どうしても聞いて欲しいことがあって。こんな気分のままじゃ、とても演奏なんて……」

「どうしたの?」

 ふと、周の脳裏にあの美しいバイオリニストの姿があらわれた。


「あの、バイオリニストの人とのこと?」


「うん……。最近、様子がおかしいんだ。いや、もしかしたらずっと、何かを隠しているんじゃないかって」

 水を一口飲んで彼は目を逸らす。


 すると、携帯電話の着信音が鳴り響いた。


 新里は着信を押して電話に耳を当てた。

「……はい? 新里は私ですが……今からですか?」


 ……誰だろう?


「いや、しかし……少しお待ちください」

 新里は送話口を手で抑えて周の方を見た。


「周君、今、県警の和泉さんていう人から連絡があって、今から少し話せないかって言われているんだが……」

「和泉さん?!」


 代わって! と、周はひったくるようにして新里から電話をとった。


「もしもし、和泉さん?!」


 電話の向こうで相手が絶句したのがわかった。


『……周君?』

「今、本通り商店街の【コーヒー屋さん】っていう喫茶店にいるよ!」


『どうしてかな……?』

「え?」

『どうして、周君が一緒にいるのかな』

「そ、それは……会ってから話すよ」


 なんでだろう? 嫌な予感がする。

 和泉の声音はまるで、恋人の浮気を疑うかのような重低音だった。


「周君、知ってる人?」

「うん、まぁ……」


 ほどなくして和泉と、もう一人やや小柄な女性刑事があらわれた。


 和泉は迷うことなくこちらに向かってくると、周の隣に腰を下ろす。


 挿絵(By みてみん)


「新里宏樹さん、で間違いありませんか? 僕の可愛い周君と、いったいどういうご関け……」


「あ、あ、あの!! すみません、アレックス氏の事件について少しお話しをうかがいたいのですが、よろしいでしょうか!?」

 和泉が余計なことを全部言い終らない内に、女性刑事が慌てて口を挟む。


「実は、私もそのことで伺いたいことがありました……」


 その時になって初めて名刺交換をした。


「警察の発表では、通り魔による犯行ということでしたが、本当なのでしょうか?」

 新里が訊ねると、和泉は真剣な表情になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ