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通報がありました

 その時、サイレンを鳴らしながらパトカーがかけつけてきた。

 おそらく騒ぎに気付いた近所の住人が通報したのだろう。

 

 お馴染みの白黒ボディは暗闇の中でも目立つ。


 パトカーから降りた制服警官達がバラバラと、倒れている男達を次々と逮捕していく。

 

 和泉はほっ、と息をついた。

 それから父の方を振り向くと、聡介は肩を上下させ、荒い息をついている。


「怪我はありませんか?」

「あ、ああ……なんとか、な……」


 無事で良かった。


「お前こそ、怪我はないのか?」

 本気で心配そうな目で見つめられ、戸惑ってしまう。

「何も問題ありませんよ」

 

 そうか、と微笑んでくれた父の顔を、和泉はまともに見ることができなかった。

 くすぐったくて。

 

 こういうのはちょっと苦手だ……。


 2人を襲ってきたならず者達は口々に悪態をつきながら、次々とパトカーに押し込まれていく。

 その様子を見守っていた2人に、声をかけてきた人物がいた。

 

「もしかして、高岡警部ですか?」

 まだ若い、おそらく初任科を卒業して間もないであろう、制服警官である。


「……そうだが、君は?」

「自分は比治山公園署地域課の津田巡査であります。初任科の際、一度だけお世話になりました!」

 敬礼をしつつ答えるその制服警官は、憧れの人に会ったかのような表情で聡介を見つめている。

 

 そう言えばごく時々にだが、聡介は臨時代行で初任科……警察学校に出向いて授業を行うことがある。

 一度だけなのに顔を覚えられていたとは。


 若い巡査は先輩にどやされ、それでは、と走り去っていく。


「聡さんも有名人になりましたねぇ?」

 和泉は笑って言ったが、

「……別に、有名になりたくなんてない」

 

 疲れているのだろうか?

 父はやや、ご機嫌斜めの様子だった。



 ならず者たちのおかげで張り込みは事実上、続行不可能となった。

 最寄りの所轄署である比治山公園署に連れて行かれ、事情聴取に応じる羽目になったからである。


 しかもこちらは、既に捜査本部が解散したはずの事件を独断で追っているという大きな声では言えないことをしているので、強くも出られない。


 やっとのことで解放された頃には日付が変わっていた。


 それにしても……日下部とうさこを襲ったのと同じ集団だろうか?

 奴らは果たして口を割るだろうか。


 そしてふと、米島朋子のことを思い出した。

 まだ黙秘を続けているのだろうか? 少し機会を見て、様子を見に行こう。


 聡介には少し休むよう言って、和泉は眠い目を擦りながら、それでも単独で西島進一の自宅前にこっそりと戻って張り込みを続けた。




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