表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/243

キャスト的には山村もみ……

 里美がびくっと身体を震わせる。

「部外者になんて言うことを教えるの?! 重大な社外秘じゃない!!」

 この人はいつもこうだ。

 昔からずっとそうだった。


 仲居頭の米島朋子よねしまともこ

 経歴だけで言えば勤続30年以上、ベテランの域に入る仲居である。

 しかし彼女は美咲と、その母親である咲子とをずっと昔から目の敵にしていた。

 今ではその対象が里美にも広がっている。

 

 要するに彼女は美咲と、彼女に味方をする人が全員気に入らないのだ。

 その理由について古参の仲居で知らない者はいない。

 美咲ももちろん知っているが、その件についてはこの際、脇に置いておこうと思う。


「だいたい、貴女がしっかり社長を支えないからこんなことになるのよ! 貴女さえもっとしっかりしていれば……そう、女将の肩書きに胡坐をかいて……社長の意見にいちいち反発してたっていうじゃない?! そんなことだから、こんなことになったんじゃない。いったい、どう責任を取るつもりなの?!」

 これもいつものことだ。


 何かトラブルが起きると、朋子はすべて『女将が悪い』とサルのようにキーキーと大騒ぎをするのだが、よく聞いてみると内容が一切ない。


 学生時代は成績優秀で、担任の先生から有名大学に進学するよう勧められたこともある、などと吹聴していたが、本当かどうか疑わしいと思ってしまう。

 

 とにかく彼女は常に感情的で、論理的ではない。


 つまらない嫉妬だ、と皆が言う。

 朋子が社長である寒河江俊幸の愛人であることは、もはや新入社員でさえ知っている、周知の事実である。

 それに。

 女将である里美はまだ30代前半。

 若さと、持って生まれた美貌については、どう頑張っても敵う訳がない。


 朋子は美咲の母親と同級生である。

 加齢と共に、肌のハリが衰えていくのが恐ろしいらしい。

 シミや皺を隠そうと、年々、化粧が濃くなる。

 

 だから、若くて綺麗な新人が入ってくると、途端に彼女の攻撃対象になる。

 些細なことでクドクドと文句を言い、怒鳴り散らす。

 若い新人は新人で堪え症がなく、すぐに『辞めます』と言い出すのである。


 本気でこの旅館を愛し、社長のことも愛しているのなら、自分だって『支え』になるべきだわ。

 美咲はずっとそう考えていた。


 自分がしていないことを他人に要求する。

 それはただの傲慢であり、不遜である。


 皆、そう思っている。

 だけど、表立って言えないのはやはり、朋子の立場だ。

 朋子が「あいつ使えない」と社長に言えば、途端にその仲居は首を切られてしまう。

 

 表向きは彼女にそれなりに従っている仲居達が、姿が見えなくなった途端に悪口を言い出すのは、もはやお約束と言っていい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ