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102/243

身長175センチ

「犯人は相当、被害者に恨みを持っていたみたいね」

 廊下を歩きながら郁美が言った。

 アナログおじさん達が多いので、資料の類はいちいち用紙に印刷して配布しなければならない。

 時間が時間だけに事務員達は全員不在であり、そうなるとそういう雑用は結衣や郁美など、女性職員が請け負うことになるのだ。

「そうみたいね」

 その点は捜査会議でも上がった。

「直接の死因は、背中を刃物で刺されたことによる失血死だけど……その前に、さんざん全身を蹴ったり殴ったり……頬に特徴のある痕がつい……」

 急に郁美が黙り込んだので、結衣は不思議に思った。


 どうしたの、と言いかけて前方を見ると。

 ぐったりとした駿河を、和泉が【お姫様抱っこ】した状態で向かいから歩いてくる。

「あ、うさこちゃんと郁美ちゃん。おつかれ~」


挿絵(By みてみん)


 見てはいけないものを見てしまったのではないだろうか。

 郁美は石化した。


 そしてふと、結衣は思い出した。

 事件が起きる少し前、駿河がやたらと女性心理を知りたがっていたことを。


 どうやら彼は、女性に対してやや不信感を抱いているような様子だった。

 

 それで? やっぱり女は信用しちゃいけない。

 だから、男に走ろうと……?!

 

 いや、案外美形同士でお似合いかも……って、いやいやいや!!

 

 和泉さんには確か、ジュノンボーイが……って、あれ?

 なんか男ばっかりじゃない?!


※※※※※※※※※※※※


 顔色がコピー用紙のように白い。

 医務室のベッドに駿河の身体を横たえ、背広を脱がせてネクタイを外し、ワイシャツのボタンをいくらか外す。ベルトをとって、時計も外してやった。


 担当医は既に帰宅しており、他には誰もいない。

 和泉は背広をハンガーにかけ、それから駿河の方を振り返った。


 今日は一日、監視の意味を込めて聡介が行動を共にしていたから、優作と連絡を取るのは容易くはなかったが……どうにか旅館の様子はわかった。


 あれから、これと言って大きな変化はないそうだ。

 横領犯も今のところは大人しくしているのかもしれない。

 奈々子からも情報は逐一入ってきている。


 ところで。捜査本部に戻った時、駿河の顔色が優れないことには和泉も気付いていた。

 その時、思い出した。ここ廿日市南署が彼の古巣であることに。

 

 自分と違って彼は神経が細い。さらに言うなら、あまり他人からの悪意に晒されることに慣れていないように思える。

 

 名前は忘れた、というより覚える気はさらさらないが……駿河と組んだこの所轄の刑事が、彼に対してやたら対抗意識を燃やしているという話は、つい先ほど聡介から聞いた。

 なので、さりげなく様子を見守っていた。

 

 男が駿河に近づこうとした。和泉は先回りして彼の傍に行き、何を言い出すか待っていた。

 

 その後の一連の流れを見ていて、思った。

 くだらない男。

 

 あんなのが自分達と同じ【刑事】を名乗るのは不愉快だ。

 今に、足を引っ掛けて派手に転ばせてやる。

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