瀕死
格郎は強烈な勢いで木に叩きつけらた。ひゅう、と肺から息が漏れる。
強い
格郎は寒気を感じた。
「まだ死なないか」
男が近づく。隙の無い佇まい。格郎は軋む体を無理矢理起こす。
「…バケモノめ…」
格郎は呻きながら構える。男はゆらりと拳をあげた。
ボッ
鋭い突き。格郎は紙一重で避ける。格郎は咄嗟にかわしたが、危険な一撃だった。スピードが段違いだ。
「うん…こんなもんか」
男が呟くと同時に放たれた蹴りが格郎を襲う。格郎は右腕で受ける。強い衝撃。パワーも上がっている。
「お前を殺すには過ぎた力かもな」
男の拳が格郎に突き出される。視認できない程の速さで数発。何発かさばくが、格郎の体が軋むと同時に後方へ吹き飛ばされる。男の手には確かな感触。
「そろそろ死んだかな」
手応えは確かだ。数メートル先の格郎の体は、木にもたれかかってピクリとも動かない。
「流石に死んだか…」
男は格郎のもとに足を進める。
「どれどれ」
男が格郎の顔を覗き込む。正直、一発でもまともに入れば、まず生きてはいない突きだ。生死を確認するまでも無いだろうが、死に顔を拝んでおくのも悪く無いだろう。男はそんなことを思っていた。
次の瞬間、格郎の拳が男の腹部を突いた。
「ごっ…」
男の呼吸が止まる。なんだ、この膂力は。男は驚愕した。体が動かない。渾身の一撃。男は大地に両膝をついて俯いた。
「…まだ死ねないんだ…まだ…」
格郎は呟きながらフラフラと立ち上がる。
「…お前程度に殺られてたまるか」
格郎は拳を握り締めた。
大地を揺るがすような咆哮。
男は頭部を打ち抜かれ、大地に伏した。